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侵食
血みたいな真っ赤な目が、目の前にある。
吸い込まれそうなそれに、俺は愕然と見上げたまま、金縛りのように動けない。
なんだこれ……なん、で?
そこまで俺のことキライだったのか?
だったらもっと早くに言ってほしかった。
何だかんだ紫乃に懐かれていると思って、嬉しかった、のに。
今までのこと全部、この半年間ずっと、俺の勘違いだったのか。
首許のシャツを引っ張られ、ブチブチッ、と制服のボタンが飛んだ鈍い音と感触がして、
「お菓子くれたところで、もれなくイタズラしますけどね」
「っな……、ッ!」
紫乃の顔が、ぐっと近付く。
目がキラキラと紅いのが、まるで外国の人形みたいで綺麗。
だけど、その宝石みたいな作り物っぽさのせいで、底知れぬ恐怖が沸きあがる。
唇の隙間から見えた歯は、不自然なほど鋭利に尖っていた。
抵抗する間もないくらい、一瞬の出来事だった。
それなのに、全てがスローモーションみたいで。
──やばい、と思ったときには、紫乃の鋭い牙が、俺の首筋に食い込んでいた。
「──っいァ゙?! あっ、あぁァあ゙あ……ッ!、あぐっ、は、ぁっ、ァあ゙……っ!!」
ッいやだ、いやだいやだいやだっ、熱い……っ!
あつい、あついあつい、いだい、痛い、なんで、なんでなんで、いや、いやだ。
たすけて、やめて。いたい。だめ。
ごりごりと嫌な音が、体内から神経を伝って、耳に直接響く。
鋭く太い牙が、皮膚を突き破る。
……だめ、だ、これ。
逃げなきゃ、逃げたい。なのに、からだ、動かない。
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