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変化
全身が、見えない何かに縛られているようだった。
体温が急激にあがって、身体中から嫌な汗がぶわりと滲む。
噛まれたところから吹き出した血をすすり、吸われているのが分かる。
細胞ごと流れ出ていくような感覚に、背筋が凍って、指先までチリチリと痺れて。
目を見開いたまま、俺は瞬きもできず、恐怖心で動けない。
「……っや、ぁ゙、ひィ、あぁ゙……ッ、」
味わったことのない苦痛に、喉から悲鳴のような、震えた喘ぎが滲みでる。
身体に起こった許容量を越えた衝撃、情報、苦痛に、じわりと涙が溢れた。
無意識に、生理的なそれがどんどん頬を伝って、そのまま俺は、どさりとベンチに押し倒される。
「……ッや、やあぁ゙……っあぐ、ふ、うぅ……っ」
顔を背けると、俺に合わせて紫乃の唇が追ってくる。
どうにか紫乃から逃れたい一心で、どんっと胸を叩くと、その手を掴んで、頭の横で押さえつけられてしまう。
些細な抵抗さえも捩じ伏せられ、問答無用で屈服させられる。
理不尽な屈辱と不甲斐なさに、また涙がこぼれた。
「ぃや、だ……っ、しの、やめ……ッ」
何も答えないのが、余計に不安を煽る。
お前、紫乃だよな……?
いつもみたいに、整った顔を歪めてちょっと卑屈に笑う顔が、見たい。
早く言ってくれ、冗談ですよ。って。
もうなんでもいいから、喋って、俺を見て、安心させてほしい。
流れの速くなった血は全身を駆け巡っていくのに、首筋から全て抜きとられていくような、死の淵に立たされたような危うい感覚が恐くて、身体の震えが止まらない。
じゅるる、と血をすする音が耳許で聞こえて、ゾッとする。
赤黒い血液がとめどなく浮いては溢れる傷口に、紫乃の舌先がぬるりと差し込まれた──、瞬間だった。
「っあ……、ひァ、ァあ──ッ?!」
朦朧としていた意識が、急浮上する。
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