11 / 16
知りたくない
目の前がチカチカして、目をあけているのか、そうでないのか分からない。
舌先で抉られた首筋から、毒でも回ったように全身の血が熱くなり、今度は冷や汗ではない汗がじっとりと身体を濡らした。
背筋を這い上がってくる、ビリビリとした電気みたいな痺れ。
腹の底から沸きあがってきたのは……、甘ったるくて強烈な、紛れもない──快楽だった。
「やっ、だぁ……ッ、あっ、あ、しの、やっ、め……ぇっ、ん、ンぅ……!」
なに、これ、なんだこれ。
なんでこんな……、変だ。おかしい。
こんな、補食対象みたいに一方的に首を噛まれてるのに。
突然起きた、自分の身体の変化について行けない。
認めたくなくて、痛みだけではない熱くいやらしい疼きが恐ろしくなって、俺は抑えられていないほうの手で、必死に紫乃の肩を掴んで引き離そうともがき、暴れる。
気持ちいい……なんて。そんなはず、ない。
「っは、なせ……ッ! やだ、ぃやだ……っ、しの、紫乃ぉ……っ!」
恥なんてかなぐり捨てて、泣き叫ぶ。
そうしている間にも、甘い強烈な毒は少しずつ、だけど確実に俺を蝕んでいって。
痛みが引いたおかげで動けるようになったはずなのに、身体の自由がきかない。
──紫乃が、俺のナカに入って、くる。
何故かは分からないけど、そんな気がした途端、全身の細胞が悦んでいるように、意識は混濁として、身体は恍惚としだす。
そう感じてしまう自分が嫌で、恐いのに、制御できない。
「ッんぁ、あ……っ、しの、しの……っ、紫乃ぉ……ッ!」
「……っ、」
もうやだ、こんな声、恥ずかしい。
硬直していた全身の筋肉がどんどん弛緩していく。
俺はぐったりと、紫乃に身体を預けて、されるがまま、喘いで。
腹のナカが、じゅわりと熱く、甘だるくなる。
こんな快楽、知らない。
知らなくてよかった。知りたく、なかった。
ともだちにシェアしよう!