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憂鬱
◇
いつの間にか、真山と一緒に行動するのが当たり前のようになってきた。
今までクラスで孤立してずっと一人でいた俺たちが、突然行動を共にするようになったのをみんなは不思議そうに見ていた。
なんせ、話しかけるなオーラを出しまくっていた俺と、変人オーラを振りまいて敬遠されていた真山なのだ。気になって当然だと思う。
真山のせいで俺の話しかけるなオーラは薄れてしまったらしく、しばらくするとクラスメイトたちもちょこちょこ話しかけてくるようになった。
俺は内心、またそのうちほくろのことを話題にされるのではないかと戦々恐々だったのだが、それを顔に出すのもかっこ悪いので、声をかけられればそれなりに応答している。
真山といるのは、不本意ながら、わりと居心地がよかった。
他のやつが、俺のほくろについて見て見ぬふりをして腫れもの扱いするのに対し、真山は俺のほくろを新たに発見するたびに、「そこにもあるんだ、気づかなかった」とにこやかに報告してくるからだ。
そんなある日のことだった。
俺は朝から、ひどく憂鬱な気分だった。なぜなら、今日から体育の授業が水泳になるからだ。
強制的に人前で上半身裸にさせられる、身体測定と水泳の授業が俺は大嫌いだった。
どうして女子は隠していいのに、男子は問答無用で全てをさらけ出さなきゃいけないなんて、あまりにも不公平だ。
男にだって見られたくないものはあるのだ。
チャイムが鳴り、三時間目が終わると、いよいよ体育の時間だった。
知らず、深いため息が出てくる。
重い身体を引きずるように水着やタオルの入ったバッグを持って立ち上がったとき、
「あたし今日アレの日だから見学~」
隣の女子が恥じらいのかけらもない声で言うのが聞こえてきた。
「はー? あんた先週もそれで見学してたじゃん」
「えへへ、ばれた? だって、日焼けしたくないもん。着替えるのもめんどくさいし」
はあっとため息を吐き出す。
いいよな、女子は。上半身をさらさなくていい水着を着れる上に、女の子の日とか言えば堂々と授業をさぼれるんだから。俺だってさぼれるもんならさぼりたい。
「深見、大丈夫?」
突然、後ろから肩をつかまれた。振り向くと、真山がいつになく真剣な顔で俺を覗き込んできた。
「……は?」
突然現実に引き戻されたような気がして、俺は少しぼんやりしたまま真山を見つめ返す。
「大丈夫? なんか顔色悪いんだけど……」
なんで気づくんだよ。
ほっといてほしいのに。
男のくせに裸を見られたくないなんて、恥ずかしくて言えるわけがないだろう。
俺は舌打ちしたいのをこらえて、真山から視線を逸らした。
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