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夜空の瞳
「そうか。迷惑かけてごめん、重かっただろ。ありがとな」
ぽつりと続けると、真山はぶんぶんと首を横に振った。
「ちっとも迷惑じゃなかったし、重くもなかったし、むしろ深見に触れたから嬉しかったよ」
俺の気を軽くするためとかじゃなく、本心から嬉しく思っていそうな顔で、真山は笑った。
キモいわ変態、と言ってやりたかったが、助けてもらった身分で悪態なんかつけるわけがなく、黙って見つめ返した。
手持ち無沙汰で、とりあえず起き上がることにする。
すると真山の全身が目に入り、彼がズボンだけをはいて上半身裸の状態だということに気がついた。
「お前、上裸じゃん。寒くないのか?」
「いや、全然。夏だし平気だよ」
「本当かよ……」
俺は自分の脇に置いてあったタオルケットを真山の肩にかけた。
真山が妙に嬉しそうに「ありがと」と笑う。
別に、と口で答えながらも、目は真山の身体に吸い寄せられていた。
文化部のくせに、意外にも適度に筋肉がついていて、かっこいい身体つきだった。
肌も程よく焼けて健康的な色をしている。
いいなあ、俺もこういう身体がよかったな。
「深見? どうしたの、ぼーっとして。大丈夫?」
真山の言葉で、あまりにもじろじろ凝視しすぎていたことに気づいて、慌てて目を逸らす。
気まずさを隠すために俺は話を変えた。
「ていうかお前、ずっとここにいたの?」
「うん」
「暇すぎだろ」
「暇じゃなかったよ。ずっと深見の顔に見蕩れてたから」
はっ? と目を見張って視線を戻したが、真山はにこにこして俺を見ているだけだった。
下手な冗談というわけではないらしい。
「……お前さあ、それ、どこまで本気で言ってんの?」
俺はうつむいて髪をくしゃりと握りつぶしながら、横目でたずねた。
「え? どういうこと?」
真山はきょとんと小首をかしげる。
「いやだからさ、おかしいじゃん。首に触りたいとか、み、……見蕩れてた、とか」
やべ、これ、顔赤くなってんじゃないか。
なんか真山のこと意識してるみたいじゃん。
でも、自分について『見蕩れる』なんて言葉を使うなんて、恥ずかしすぎる。
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