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もっと見たい
片手で顔を覆いながらちらりと真山を見ると、
「全部本気だよ」
当たり前じゃん、というような声音で返ってきて、俺は言葉を失った。
「日が当たって深見の肌が白く光るみたいになって、血管が青く透き通って見えた。風が当たって髪がさらさらなびいて、つやつや光って綺麗だった。眠ってる横顔も、まるで作りものみたいに綺麗だった。本当にすごく綺麗だったよ。だから見蕩れたんだ」
なんのてらいもなく答えられて、俺の方が顔に火のつきそうな気分になる。
「綺麗って……こんなほくろだらけの顔のどこが綺麗なんだよ」
「綺麗だよ」
真山はきっぱりと答えた。
それから、深い夜空みたいな瞳で、じいっと俺を見つめる。
引き込まれてしまいそうな気分だった。
「もっと見たい……」
真山が微かに掠れた声で呟く。
どくっ、と心臓が鈍い音を立てて軋んだ。
その軋みは少しずつ下っていき、腹のあたりで暴れ始める。
「見せて。脱いで見せて」
真山の視線が、俺の顔からゆっくりと下がっていくのを、嫌というほど感じた。
その瞳の奥に、燃え上がる炎がちらちらと煌めくのを、俺はたしかに見た。
「あ……、だ」
だめに決まってんだろ、といつもの調子で答えようと思った。
でも、なぜか声が上手く出せない。
喉の奥が引き絞られるように痛んで、息ができない。
「……少し、なら」
気がついたときには、思いもしない答えを返していた。
真山の瞳の中の炎が一気に勢いを増す。
ゆっくりと立ち上がった彼は、俺のかたわらに腰を下ろした。
「見たい。見たい。見せて」
すがりつくような必死な声。
その声に鼓膜を刺激され、身体の奥底の軋みが高まっていく。
「……脱ぐのは、嫌だ」
それは俺にとって、譲れない最後の一線だった。
この服の下には、『虫みたい』とクラス中のみんなが顔をしかめた醜い身体が隠されている。
でも、ここだけなら。
そう考えて、俺はシャツの手首のボタンを、震える指でそっと外した。
袖を数センチ上げるとすぐに、手首にある大きなほくろが出てくる。
さらにめくり上げると、中くらいのものが二つ並んでいる。
ごくっ、と真山の喉が鳴る音がした。
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