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星座

やけに静かだ。 二人分の呼吸の音と、シャツをめくり上げる衣擦れの音だけが聞こえる。 真山の喉がまたごくりと鳴り、俺もつられたように唾を飲み込んだ。 シャツの袖を肘あたりまで上げると、真山が身を乗り出すようにして屈み込んできた。 突き刺さるような視線が、俺のほくろだらけの腕を、まるで焼きつくそうとしているみたいに、舐め上げるように見てくる。 「……深見のほくろ、綺麗だ」 独り言のように真山が言った。 俺は口許を歪めて笑う。 「なわけねーだろ……。自分で見たって虫がうじゃうじゃくっついてるみたいで気持ち悪……」 「そんなことないよ」 俺の言葉を遮るように真山が言った。 「まるで星空みたいで綺麗だ」 「……意味わかんね」 俺はなぜか動悸が高まり、体温が上がるのを感じながら、悪態をついた。 真山は真剣な眼差しで俺の腕を見ながら、ほくろを指差しながら言う。 「ほら、ここ。カシオペア座がある」 は、と俺は息を吐いた。 真山の指が、俺のほくろでカシオペア座の形を描く。 「これはみずへび座。あ、オリオン座もあるね。ほうおう座もあるよ。それに、ここにも……」 真山は高揚したように次々と俺の腕から星座を見つけ出していった。 それからゆっくりと目をあげて、 「さ……触っていい?」 不安と期待の入り交じった表情で、声を上擦らせて言った。 俺はうるさく暴れる心臓のあたりをぎゅっと押さえつけながら、 「……だめに決まってんだろ」 と答えた。それでも真山は諦めずに、追いすがるように口を開く。 「じゃあ、三つだけ」 「はあ?」 「三つしか触らないから、お願い」 真山の目の中の炎は、もはや烈火のごとくぎらぎらと燃え盛っていた。 俺はその勢いに圧されるように、うなずいてしまった。 「は……やった……」 真山は呼吸を荒くしながら、ゆっくりと手を伸ばしてきた。 肉食獣の牙にかかった草食動物みたいな気分だ。 身動きがとれずに、俺はばかみたいに固まって、真山に食われるのを待っている。 指が触れた瞬間、びりっと電流が走ったような気がした。 腕から首や背中へと、何とも言えない震えが駆けのぼっていく。 は、は、と俺の息も浅くなっていた。 腹の奥底のほうが、激しく脈うっている気がする。 なんだ、これは。 こんなのは、知らない。

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