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【21】「不適切?放送事故レベルだ。」

「ん?何だい。マタタビで酔った猫みたいになってる。 頑固でわからずやな君に僕は唯誰よりも尊い存在と説明しているだけなのに。分かりやすい例えだっただろ? おいおい君こんな所で はしたない顔したら駄目だよ。もしかして、厭らしい気分になった?」 酷い。 無意識に零れた言葉に、男が目を丸くする。 「酷い、あんまりだ。こんなの、い、いじめだ。何で、こんな大人げない…酷い。精神的ダメージが…酷い…うぅ」 「こんなに分かりやすく説明したこの僕をレイプ魔のような目で見ないでくれよ。いやまて、精神的レイプという例えがこの世には有るから君が レイプと判断すればレイプになるのか。精神的なレイプだけど。」 「れいぷ?何だ洋菓子か。確かミルクレープとか言う名前のケーキが有ったはず。」 私生活で触れない言葉だ。 「ははぁ、僕に説明させたいのか。いけない子だねぇ。 なるほど~僕にあんな事やこんな事を言わせたいのか大歓迎だよ錦君。」 前後の言葉からどうせ碌な内容ではないだろう。 そういえば、ニュースで似たような言葉を聞いた気が…たしか強姦… やはり説明は結構だと言う前に男は言葉を続ける。 「君驚くほど大人びてるけど、やっぱり、 こういう所で子供だなって安心するな。」 男が微笑んだまま耳朶に唇を寄せ、低く囁く。 「――性的凌辱をくわえることだよ。 うん、分かりにくいな。 簡単に言えば性犯罪ってやつでね泣いても嫌がっても無理矢理セックスされる事さ。」 掌が腹を撫で臍の下で止まり薄いシャツ越しに温もりが伝わる。 「体の奥までペニスを突き立ててこの中で射精するんだ。 そういえば、君は別荘で足を開こうとしてたね。意味わかってた?」 「…しなかったじゃないか。」 「しないさ。僕は別に君を傷つけたいわけじゃない。」 男は知る由もないだろうが、性交が何か知らぬほど無垢ではない。 実の親が不特定多数の伴侶以外の誰かと劣情のままに交わる光景を何度も目にしたのだ。 年齢と共に外部からの刺激で得るだろう言葉や知識以前に、 事故に近い形で一方的に視覚で知った経験故に性に関する言葉と知識が上手く結びついて居ない。 「君はね、ここで受け入れるんだよ。」 「っ?」 手が薄い骨盤をなで尻へ回る。 指が筋肉の少ない柔らかな肉へ浅く食い込んだ。 「そんな…所で」 「ここをいっぱいに広げてね、根元までペニスを受け入れるんだよ。」 「無理だそんなの」 「無理矢理するから君の許可は不要だ。入れた後はね。 それから好きなだけ射精して気が済んだらお終い。 終るまで何時間もずっと君は泣きながら受けいれなくちゃぁいけない。」 愛情行動や生殖を目的としない交わりなど何の意味があるのか理解が出来ない。 更にそれを、法を破り人権を無視し無理やりにでも行いたいと思うかが謎だ。 「それがレイプ。ふふ。怖がらせたかな?大丈夫。怖がらないでも良いよ。合意じゃないとセックスはしない主義だ。」 脳裏によぎる生臭いほどの淫らさと、男の言葉が錦の脳内で重なりとてつもない不快さが突き抜ける。 「最低だな。」 「おっ、ようやく調子が戻ってきた。貶されてもときめきを覚えるのは君位だよ。」 「俺が不快に思ったのはお前が自分で自分を貶める発言をしてる事だ。」 「……え?」 あっけにとられた男の顔は何だか幼く見えた。 唇を薄く開きぽかんとし、無防備な表情だ。 「何だそのアホ面は。なにが「え?」だ。お前は低能なのか。非常に残念だな。 自らをよりにもよって卑劣な性犯罪者に例える何て被虐趣味でもあるのか救いようもない変態だ。」 「え?怒ってるのそこなの?」 「他に怒る所があるのか?」 目を瞬かせ、唇をほころばせた。 そして――不思議と幸せそうな表情を見せる。 「はははは。不適切な例えだったね。御免って。うん、やっぱ、君の事好きだな。君のそう言う所大好きだ。」 「不適切?放送事故レベルだ。大体お前なんかに俺の何が侵せるんだ。 俺にとってお前なんか蟻同様の矮小な存在だ。俺はお前なんか好きじゃない。何とも思っていない。」 男はいつものふざけた陽気さでホールドアップする。 ごめんね。 と言いながら、錦を抱きしめ頭をくしゃくしゃと撫でる。

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