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【9】「罪悪感を覚えるので止めて欲しい」

「僕って何でもできるじゃん?偶に自分が怖いよ。うふふ。」 男はムース部分を口にしながら「会心の出来」だと自賛した。 食べるのが勿体ない見た目のそれをフォークで切り崩していく。 行儀が悪いのは承知だが、フォークを伸ばし男の食べるケーキの端を少しだけ削り口に運ぶ。 男が如何いうものを好んで食べるのか興味があった。 嬉しそうに皿を寄せてくるが、それ以上のつまみ食いは止めた。 シロップで濡れた桃は、たっぷりの果汁を口の中であふれさせる。 ――甘すぎる。 薄いスポンジを土台に重ねられた生クリームとムース、桃が四分の三ほど占めたケーキは甘くてとてもじゃないが食べられない。 皿を押し返すと男は「あ、これは甘すぎたかな?」と小首をかしげる。 生温くなった紅茶で甘さをおしながす。 無言で南瓜のケーキをもう一口食べる。 ナッツは制限に引っかかるので、男が食べているケーキの皿の上に転がした。 男は「わぁ有難う」なんて笑顔で返す。 罪悪感を覚えるので止めて欲しい。

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