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【7】「得たいが知れない」

最も濃厚な線は、次期総裁選任の筋とは別に「何か」取引があったのではないか。 彼が選ばれたのは特別な理由が有る筈だ。 しかし教育が必要であったと言う事は、彼は不完全であったと言う事だ。 家柄故ならば、一族内の後ろ盾も薄い家系と言える。 そんな少年が朝比奈の中枢にコネクションがあるとも考えられないし、何よりも取引等無理だろう。 慈悲だけで動く様な家柄ではない。 表舞台に出ていなかった彼は、どのようにして上層部の庇護を受けたのか。 例えば、所謂「日陰の身」であったなら? そこまで考え首を振る。 あくまで予想だ。 10歳の子供の想像だ。 事実はもっと組み込んだものだろう。 「信じられない事ばかりだ。」 有り得ない。 そればかりが彼に付きまとう。 彼は余りにも得たいが知れない。 この男は何者なのだろう。 どういう家庭環境で育ったのだろう。 何処までが本当なのかわからない。 ますます、怪しい。 「そうだよ。信じらんないよ。 あの人たちこの僕のウィンク見ても顔色変えないんだよ。 鼻の下伸ばされても困るけどさぁ。何だかなぁ。」 「当主相手にウィンクだと?」 まともな神経の持ち主なら出来る筈は… 「だって威圧的でさぁ、上の人達集まると空気が重いんだもの。場を和ませようと思ったんだけどねぇ。 でももしかして、かなり目が悪くて僕のウィンクは気が付かなかった可能性もあるから 次からは投げキスにしよう。それが良い。」 まてよ。 この男ならやりかねないと考えを改める。 錦の心を見透かすように海輝は微笑み 「まっ色々あってね。運が良かったんだよ。僕は神に愛されてるから」 と冗談とも本気ともいえぬ口調で嘯く。

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