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【8】「ボーダーライン」

「何だい、その顔は。あのね朝比奈は朝比奈でもね、勢力争いに影響していない家の人間が欲しかったのさ。 出来ればまっさらな状態の子供ならなお良し。余計な知識や人間関係を知らない状態の方が取り込みやすいからね。 実際一族内での養子縁組は何件かあるよ。お子様には難しい世界があるんだよ錦君。」 「では、何故」 当主の側で教育を受けていた? 指先が唇に触れ、彼は淡く笑んだ。 これ以上は踏み込むなと笑顔のまま無言でボーダーラインを引く。 聞きたいことは山程あったが、海輝はそれ以上語らないので錦もそれ以上は踏み込まない。 説明が面倒とか、または踏み込まれたくないだとか喋りたくない理由は様々だろう。 納得はしきれないしまだ分からない事が多いが、誰にだって踏み込まれたくない領域は有る。 錦だって同様だ。 海輝が拒絶をしたならそれ以上の詮索は不要だ。 事情は彼が語った物が全てと飲み込むしかない。 答えはそれ以上でもそれ以下でもない。 だから最終的に彼が側にいると言う事実が有れば、それで良いじゃないかと半ば強引に自身を納得をさせる。これでお終いだ。 しかし、一つだけはっきりとさせたい事が有った。

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