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【15】「僕は君が愛おしい」
「――幻滅しなかったのが奇跡だな。」
「するものか。理想以上に素敵な子だ。夏休み一緒に過ごして、 昔家族と一緒に住んでいた頃に戻った気分だったよ。 揶揄ったときの君の反応、君の拗ねた顔や屁理屈をこねる姿や偶に笑う顔が想像以上に可愛いくて、 君といると楽しくて暖かくて、ようやく生き返った気がした。 君が側にいてくれたらきっともう寂しくないんだなって。」
言葉を切り、海輝の指が錦の指をすくう。
「君が僕を生かしたんだ。だから、僕は この家の為じゃない。君が望んでくれるなら君だけの為に存在しよう。」
錦の手を取り誓う様に、そっと甲に口付ける。
何という言葉をこの男は口にしているのだろう。
まるで、愛の告白ではないか。
酩酊に体が傾ぎそうになる。
「僕は君が愛おしい。」
経歴を知りながらも、彼は錦を望んだと言う。
間引かれた不要な果実を、この男は拾い上げたのだ。
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