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【19】「君に罪はない」
「海輝。」
「この家に来る前からそう考えてた。君に会いたいと思ったときからすでに決めていた。」
「――…俺は何も知らなかったんだ。お前が思ってくれていても、何も知らなかったんだ。」
「知らなくて当然だ。君の兄になれる確証はなかったから。何も僕は君が想像するように、 君のお父さんが隠し持っていたわけじゃない。 単純に合格ラインに達するまでの期間が3年ほどだったから 正式な情報公開がされていないだけなんだ。君に罪はない。」
「父様達の為に…戦う気はないのか。」
「君の望みに繋がるなら戦うよ。君の家族になれたんだから、それくらいのお礼はしないとね。」
「そんなに甘い物じゃない。」
「そうだね君は手ごわそうだから時間をかけて口説くことにしよう。」
そう言う意味ではないが、生半可な道でないことは彼だってわかっているだろう。
「君にも沢山プレゼントしたいしね。」
「お前から与えられる地位などいらない。どの椅子もそれにふさわしい人間が座るべきだ。」
「じゃぁ、他に欲しい物は?君次第だ。流石に月を手に入れろと言われると難しいけれどね。 君の足元に朝比奈の人間を皆跪かせても良い。」
彼に出来るとは正直思えなかったが、その思想はあまりにも危険だ。
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