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第10話 身体に訪れた異変① 少しだけ※

「それでね、僕が近づくと犬は吠えるんだ。諒たちには吠えないのにね」 「...っ、そう...なんですか。何だか、ちょっとかわいそう...ですね...っ」 ご飯を終えた後の会話は数十分と続いた。 そして、諒の父親が近所の犬の話をし始めたあたりから僕の身体に異変が訪れた。 身体は熱く、呼吸が荒くなる。 まるで、熱を患ったみたいに頭がフワフワとしながら頭痛がする。 これは確実に病気に罹ったな、と考えきりのいいところで話を終えようとする。 「でもね、僕は犬には好かれないけど猫には何故か好かれるんだ..。といっても―――」 と諒の父親が話を続けようとすると 「...?零くん、何だか顔赤いわ。それになんだかちょっと辛そうよ。大丈夫?」 「...っ、はい。ちょっと,,,風邪でもひいたんですかね...はは...っ」 僕の体調に母親が気付く。 僕は笑ってごまかすが、正直かなりしんどい。 身体の中にマグマでもあるんじゃないかというくらい熱くて、汗が滲んでいた。 すぐ冷えピタとかもってくるわ、といいながら諒の母さんは部屋の奥へ消えていった。 諒の父親は、横になってなさいと机の近くにあるソファに僕を寝かせる。 一体この家にはいくつソファがあるんだ、と思いつつゆっくり呼吸をする。 そして、諒の母親の帰りを待っていると、トントンと階段を上がってくる音が聞こえた。 「ただいまぁ~...、ってあれぇ?零ちゃんどうしたの?」 足音の正体は優さんだった。ソファに横たわってる僕を見て諒の父親に訊く。 「あぁ、優。おかえり。なんだか零くんの体調が悪いようで少し診てやってくれないか?」 おっけーと、優さんが返事をするとゆっくりと僕を起こす。 「じゃあ、口あけてあーって言ってみて。」 「あーー...」 まるでお医者さんみたいで、凄いな何て思っていると 「うん、腫れてはないね。...因みに今零ちゃんお医者さんみたいだな、って思ったでしょ。 みたい、じゃなくて僕はお医者さんだよ、と言っても角のお医者さんだけどね」 「え...!そうなんですか...っ」 そうだよぉ、と笑って僕のおでこに手を当てる。 それにしても驚いた。優さんがお医者さんなんて、しかも角の。 これは、僕の生えてこない角のことを相談したりするのに最適の人間なのでは。 と思っていると 「――じゃあ、念の為体も見してくれるかな?」 「...あ、はい。んしょ...」 僕は角のお医者さんにしか言ったことがなくて、風邪のときどういう風に診察が行われるかを知らなかった。 取りあえず服を脱ぎ、上半身を優さんに見せる。 「ふぅん...、特には異常はなさそうだね。」 そう言って、背中を見たり首を撫でたりする。 しかし、優さんの手が胸にさわり、腹へすーっと撫でた瞬間 「...っん、ぁ...!え?あ...ご、ごめんなさい」 優さんの指が微かに僕の乳首に触れた。 普段、風呂で体を洗うときに触ったりしたときには何もなかったのに...え? 自分でも何故声が漏れたのかも分らず困惑する。 「??どしたの零ちゃん。どこか痛かったぁ?」 そういって、優さんは声が漏れた原因を突き止めるべく、鎖骨あたりから腹にかけて何度も撫でる。 「ふっ...や、何でもっ、ない...ですっ...ぁ」 「...ね、零ちゃん。僕もお医者さんだけど、言ってくれなきゃわかんないや。...どうしたのか、教えてくれないかなぁ...?」 優さんは申し訳なさそうにそういうから、これは言わなきゃいけないことなんだろう。 せっかく親切に診てもらっているのに、体の異常を言わないなんておかしいもんな。 僕は正直に話すことにした。 「いや、あの...ふ、普段はなんともないんですけど....、その、胸が変で....っ」 「胸かぁ...。どんな風に変なのか教えてくれるかなぁ?」 「え、えっと...、くすぐったいに似ているというか...、ピリッと来るんです...。変な声も出ちゃうし...っ」 「...なるほどねぇ」 そういって優さんは胸を撫でたり揉んだりし始める。 その度に僕は小さく声を漏らした。 しばらく撫で回した後、突然キュッと乳首を摘んだ。 いきなりの事で油断していた僕はまた変な声がです。 「んぁッ!ちょ、も,,,、平気です...っ。だから...っあ!」 僕は触られているだけなのに変な声が出るのが恥ずかしくて、優さんにやめるように言う。 それでも、僕が喋っている間にも弄ってくる。 すると、諒の母親が何か箱のようなものを持って戻ってくる。 「よいしょ、持ってきたわよ。それで、どうしましょう...?」 「ん~とね、じゃあコレ使おっか。これで変な感じがなくなるといいんだけど」 そういって、優さんは箱から白くて丸い絆創膏のようなものを両乳首に貼り付ける。 その行為にすら僕は反応してしまい、諒の母親の前なのにこんな痴態を晒してしまい、泣きそうなほどだった。 「胸はこれで大丈夫だろうし、きっと知恵熱か何かだと思うから少し休んだら治ると思うよぉ。 ...ごめんねぇ、角以外のことはよく分らなくて確実なことは言えないんだぁ...。」 「っ、いえ、こうして処置もしていただいてますし...っ感謝しています...はぁッ」 服を着つつお礼を言うと、布が胸に擦れてまた反応する。 角に加えてこんな変な身体が嫌で、とにかく身体の異常がなくなるのを願った。 額の大量の汗を拭って、ほぅっと息をつくと 「ありゃ、零ちゃん汗かいちゃってるねぇ。...どう?一緒にお風呂入らない?さっきのシールは水に濡れても平気だし、零ちゃんだけだと何かあったとき心配だからさぁ」 「え...あ、えと...お風呂っ、お借りしてもだいじょ、ぶですか...?」 優さんに提案され、僕は一応諒の母親に聞く。 「えぇ、もちろんよ。ゆっくりあったまってきて頂戴ね。」 優しく答えてくれて安心する。 着替える服はまた諒のものを借りなければならないのは申し訳ないが、正直汗でベトベトになっていて気持ち悪かった。 優さんに案内され、後ろをついていく。 その間、彼らが黒く笑っていることに気付かないまま―――

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