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第19話 躾④
あれから時間は過ぎて、ついに夕食どきになる。
僕はというと、あと2,3口で水を飲み干せるほどまではペットボトルを空にさせていた。
これでお仕置きを逃れられる...と思えるのはよいことだ。
...ただ一つ、困りごとがおきた。
___そう、尿意だ。
そりゃあこれだけ水分取っていたらトイレに行きたくなるのは当たり前だろう。
だが、生憎この部屋にはトイレらしき場所はなくあったとしてもチェーンのせいで辿り着けないだろう。
だからといってもらしたりなんてしたらお仕置きに決まっている。
出そうになるのを必死に堪え、海様がくるのを待った。
僕が残りの水を飲み干し、しばらく経った頃に海様は部屋に入ってきた。
「ちゃんと全部飲んだか?...ん、ちゃんと飲んであるな。」
そう言って空になったペットボトルを手に取り確認する。
僕は尿意の限界が近いことを海様に知らせるために口を開く。
「あ、の...海様。僕...っトイレ、行きたいです...。」
「...なに、腹痛いの?」
「い、いえ...その、漏れそう....で。」
言っててなんだか恥ずかしくなって、手で前を隠す。
「へぇ...。じゃ、案内するよ。ただ目は隠させてもらうけどね。」
と、海様が明るく言うもんだからなんだか逆に僕はゾッとした。
海様は服のポケットから黒く細い布を取り出し、僕から視界を奪う。
目が覆われたことで何も見えなくなり、恐怖が一層強くなる。
ふいに、首が何かに引っ張られあぁ、チェーンで誘導しているのかと考えた。
音的に今まで居た部屋から出て、何歩か歩くと扉の開く音がする。
クイッと首を引っ張られ、よたつきながらもトイレであろう場所に入る。
....というか、僕目隠しされてるってことは海様に手伝ってもらうのだろうか。
いやいや、恥ずかしい。普通に恥ずかしい。
人としてみていないといったって、恥ずかしい...。
そんなことをモンモンと考えながら海様に引かれている。
あれ、トイレだよな?ここ。トイレなのになんでこんなに部屋を歩くんだ...?
もしかして、入った部屋の中にトイレがあるのだろうか...?
少し、嫌な予感を感じながら僕は海様の後ろを歩いていく。
すると、海様は立ち止まり僕の脇の下に手を通し僕を持ち上げる。
「ぅわっ、な、なななんですか...?」
いきなり持ち上げられ僕は驚く。
しかし、海様は黙ったままだ。
そして持ち上げられたまま数歩歩いた先で僕は下ろされ、座らされる。
座り心地てきに、おそらくイスだ。
だが、これだけはわかる。.....トイレの便座ではない。
真ん中に穴が開いていない、というのもそうだし便座特有のスベスベしたような感じではないからだ。
何かわからず警戒していると、海様が僕の足を持ち上げたと思ったら膝に重心がかかる。
そして、その後反対の足も同じようにされる。
___これは...足が吊るされている?
僕が怖くて声を出せないでいると、僕の目に光が入る。
海様が僕の目隠しを外したからだ。
一番最初に目に入った光景に僕は絶句する。
僕の丁度目の前にあるのは三脚。
海様の手には黒いビデオカメラ。
それに繋がったコードの先には、パソコン。そしてその先には液晶のモニター。
慌てて海様のほうを見ると、先ほどまではつけていなかったお面の様なものをつけている。
口の部分はなくて、目のところだけ切り抜かれた鼻からおでこにかけての白黒のマスク。
目元まであるこげ茶の前髪のせいで、海様がどこを見ているのかわからない...。
「どう?M字開脚イス。恥部が露になって見やすいな。」
「ッ!!!...何ですか、コレ。海様...っ今から何を....」
そう、言いかけると海様はニヤリと笑って答える。
「何って...能無しくんの教育ショーだよ。で、せっかくならギャラリーも居たほうがいいだろ??」
「な!?ギャラリーって...っ??」
わけも分らず、僕は困惑する。
そんな僕を無視して、海様は先ほどの黒髪の子を呼びパソコンを操作させる。
少し経って出来ました、と黒髪の子が言うと同時に液晶モニターがつく。
お礼を言い海様は手に持っていたビデオカメラを彼に渡した。
いきます、と彼がいうとビデオカメラのスイッチを押す。
その瞬間、モニターに海様が写される。
「こんばんは、カイです。見に来てくださっている方、ありがとうございます」
まるで、誰かに話しかけるようにビデオカメラに向かって喋りだす海様。
どういうことだ...とモニターを再度見てみると
『こんばんは~』 『キタ━━━(゚∀゚).━━━!!!』 『待ってましたよカイさんっ!!』
『お久です』 『期待大』 『888888』 『✧+(0゚・∀・) + wktk✧』
変な言葉が右から左へ流れている。...何だコレは?
「今日の子は、なんと能無しです。それでなんですが人間もどきの能無しくんには教育が足りてないので、教育ショーを是非皆さんに見て貰おうかなというわけです。...別にいいよね?」
『低音イケボ///』 『おk』 『おkです~』 『能無し...顔によるw』 『了解ッス』 『好みじゃなかったら帰りまする』 『割と楽しみ』
海様の声に返すように、たくさんの文字が返答だったりそうでなかったり....。色々な言葉が現れる。
これ...まさか、ネットで....っ!?
「じゃあ、今日のメイン。能無しくんのご紹介です。最初に言っときますが、地雷の方など気をつけくださいね~。じゃあドン。」
そういって僕にビデオカメラを向け、三脚に固定する。
僕は左下を向き、必死に顔を隠す。こんな格好見られているというだけでも泣きそうなのに...っ。
その僕をみて、海様は僕のほうへより髪を引っ張り無理矢理上へ向かせる。
「はい、これが顔。...まぁ、人によったら好きな子もいるかな?........おい.。次妙なまねしたら首、流すからな」
ニコニコといった後、僕の耳元で低く冷たくそう、囁いた。
___モニターには、僕の今にも泣きそうな顔がモニターに写っていた。
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