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アオキ4
鋭い眼光に射抜かれて、アオキの喉がひくりと鳴る。
今更とぼけても仕方ないし、この隙のない楼主には全部お見通しだろう。
「…はい」
アオキが素直に認めると、楼主の眼差しがほんの少し和らいだ。
といってもやはり表情は冷たく、冷徹である事に変わりはないのだが。
「なら話は早い。お前は近いうち座敷牢へ行ってもらう」
頭を金槌か何かで叩かれたような気分になった。
覚悟していたとはいえ、面と向かって言い渡されると衝撃が走り、受け止めるのに時間がかかる。
「…………承知しました……」
少し間を置いてアオキが答えると、顎を捕らえていた煙管がスッと抜かれた。
楼主はデスクの上に置かれた小箱から紙煙草を取り出すと、馴れた手つきで雁首に詰めていく。
「随分と素直じゃねぇか。座敷牢に容れられて戻ってきた仲間を何人も見てきたはずだろ。怖くねぇのか?」
マッチに火をつけると受皿の紙煙草がチリチリと燃える。
雁首と吸い口から紫煙がもくもくと舞い上がり、アオキの目の前を白く濁らせた。
怖くないはずがない。
あそこは地獄だったと何人もの男娼が口を揃える場所に、今から行かねばならないのだから。
しかし、アオキには抵抗する権利や権限は全くないとわかっていた。
今までのらりくらりと男娼をやっていた自分へのツケだと充分理解しているからだ。
「俺は出来の悪い娼妓ですから」
アオキの言葉に楼主の眉がピクリと上がる。
「顔は悪くねぇのになぁ。お前やっぱりセックスは嫌いなのか」
唐突に質問されてアオキは戸惑いながらも頷いた。
迷ったのは本当にセックスが嫌いかどうか自分でもよくわからなかったからだ。
「ここの男娼はあの研修で大体堕ちる。翁の手管は間違いないからな。だがお前の肉体は拓かなかった」
紫煙をくぐらせながら楼主がため息を吐いた。
「お前、無意識にストッパーをかけてるな?」
「……え?」
言葉の意味がわからなくてアオキは呆けた顔をして楼主を見上げた。
すると、いきなり楼主の手が伸びてきて着物の袷を左右に開かれた。
肉づきの薄い上半身を露にされて、アオキは驚きのあまり声も出せずに固まる。
「何だ、肌艶はいいじゃねぇか。アザミにはちと劣るがな」
切れ長の眼差しがアオキの肌の上を突き刺していく。
細い肩や二の腕、脇腹を見ていた楼主の眼が、アオキの薄い胸の上で慎ましく色づく二つの突起に止まった。
ハッと我に返ったアオキは慌てて身体に両手を巻きつけて隠そうとした。
「誰が隠していいと言った?手は頭の後に組んでろ」
威圧的に命じられて、アオキは仕方なく頭の後で両手を組んだ。
「いい事を教えてやる。その恥じらいはなくすなよ?男はそういうのに弱いからな」
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