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アオキ12

「アオキ…」 紅鳶(べにとび)の大きな手がアオキの顎を持ち上げた。 真っ赤になった顔をまともに見られてしまい、羞恥でどうにかなってしまいそうになる。 切れ長の凛々しい瞳は今にも食らいつきそうな獰猛な雄の光を湛えていていた。 アオキたち男娼を抱きに来る客の殆どはそんな表情をしているものなのだが、紅鳶の表情はそのどれとも違う圧倒的で威圧的なものを放っていた。 見られているだけで性感を刺激されているような肉体の芯を揺さぶられるような、濃密で濃厚な欲情をひしひしと感じる。 突然アオキは怖くなった。 この男に抱かれたら二度と元の自分に戻れなくなってしまう。 本能的な恐怖と同時に、得体の知れない衝動が襲ってくる。 「………俺を、抱くんですか」 震える声で訊ねると、紅鳶は顔色一つ変えずアオキの着物の帯をほどいた。 「あぁ、抱く」 きっぱりと告げられて、アオキはますます焦燥感に駆られてしまう。 襦袢を留めている紐に手が伸びた瞬間、思わずその手を掴んでいた。 「でも俺は……他の娼妓みたいに感じる事ができないし、あなたを満足させる事ができな…………んッ」 抗議の言葉は紅鳶の唇に塞がれてしまい最後まで言う事ができなかった。 熱い舌が攻撃的に侵入してくると、すぐに舌を絡め取られ舌根が痛くなるほどきつく吸われる。 性技の乏しいアオキが怯えて身をすくませているのをいいことに、口づけはますます激しくなった。 「……っん…ん」 その巧みな口付けはあっという間にアオキを熔かしていく。 こんな口づけ、誰ともしたことがない。 これがゆうずい邸一の実力。 客の中にもこれほど性技に長けた男はいなかった。 あっという間に力が入らなくなり、くたりとなったアオキの身体をベッドに押し倒すと紅鳶は鷹揚な手つきで自らの襦袢の前を寛げた。 よく鍛えられた肉体は引き締まっていて、良質な筋肉を纏っている。 こんな男に抱かれたら、確実に泣かされてしまう。 紅鳶はアオキを見下ろすと、まるで小さな子どもをあやすようにアオキの頬を撫でた。 「いいから黙って委ねてろ。今から天国をみせてやる」 「……んっ……んっ、はっ……」 アオキは、自分のものではないような声が出そうになるのを必死に堪えていた。 大きく開かれた脚の間では紅鳶の頭が上下に浮き沈みしている。 あろうことか、彼はアオキの屹立を口で愛撫していた。 端整な顔が自分の股間のものをしゃぶっているのかと思うと、ひどい羞恥と罪悪感に襲われる。 耐えきれず目を瞑るとすぐにたしなめる声が飛んできた。 「目を閉じるなと言っただろ」 罰を与えるかのように先端の切れこみに爪を立てられて、アオキは呻きながら必死に瞼を開いた。 自ら膝裏に手をかけ、脚を大きく開いた恥ずかしい姿の自分が目に飛び込んでくる。

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