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アオキ19
この淫花廓には厳しいルールや規約はあるものの、客が娼妓と楽しめるようなものは一通り揃えられている。
淫花廓の客はそれらを使って娼妓と愉しむ者が多い。
玄人好みやマニアック向けのアイテムも揃えてあるからだ。
その中でも客からの評価が高いのが肥後ずいきといわれる淫具だ。
肥後ずいきとはハスイモの干した茎で作られた催春具の事だ。
乳白色の淫靡な性具は、濡らすと滑った粘液を分泌するのだが、その粘液には男性の精力を増幅させる作用があるといわれている。
効果は人それぞれであるが、その粘液に敏感な体質の者が使用すればたちまち刺激に翻弄され、いてもたってもいられなくなるという。
そのずいきが今、アオキの慎ましい後孔をぬるぬると行き来していた。
「…あっ、い……イきたいっ…イきたいっ…」
粘液を纏わりつかせたその張り型が体内に埋められるたび、空気と混ざった卑猥な破裂音が下腹部から響く。
アオキの陰茎の根元には、リングが嵌められていて容易に達する事ができないようになっていた。
ずいきのもたらす快感と、塞き止められたことによって体内で暴れ狂う両方の快感に責められてアオキは真っ赤になりながら涕泣を漏らしている。
アオキがずいきを使われたのは何もこれが初めて、というわけではない。
感度の悪いアオキをなんとか蕩かせようと今まで何人もの男たちにこのずいきで責められた。
しかしアオキの肉体は頑なに反応しなかった。
あの頃は淫具の無機質感にさえも違和感を感じていたからだ。
こんなものに中を掻き回されても気持ちよくないと思っていた。
それなのに、今はずいきを前にしただけで前がずぶ濡れになり、身体の奥が疼くようになっている。
「ほぉ……随分旨そうに咥えてるじゃねぇかアオキ」
うつ伏せになり、腰をくねらせているアオキの顎を上向かせながら楼主が満足げに口端を上げる。
「感度も表情もなかなかエロく育ててもらったみてぇだな。尻の具合いもなかなか良さそうだ」
白桃のような双丘に伸びる楼主の手の甲を、突然誰かが叩き落とした。
「邪魔立てするなよ、楼主様」
眼差しを鋭くさせた紅鳶が、楼主から隠すようにアオキの身体を庇う。
楼主はスッと瞳を細めると何も言わずに手を引いた。
再教育が始まってから三週間、アオキは毎日のように紅鳶に抱かれていた。
性技はもちろんの事、礼儀作法や様々な知識なども指導してもらい娼妓としてだけでなく人としてのアオキも随分成長したように思う。
再教育中、一週間に一度経過報告として楼主と数名の翁面の男衆立ち会いのもと、彼らの前で紅鳶との情交を公開させられていた。
初めの頃こそ抵抗があったアオキも今ではすっかり淫蕩と化し、紅鳶からもたらされる様々な淫戯に夢中になっている。
「あっ…っ紅鳶様…これ、取って…出したいっ…あぁあっ」
リングによって拘束された陰茎は痛々しく鬱血している。
欲望を吐き出す事ができず、体内に留められ続ける熱はまるで灼熱のマグマのようにアオキの内臓を燃え上がらせていた。
張り裂けんばかりに膨らんだ剥き出しの先端からは愛液がとろとろと溢れ、茎を伝いその下にあるずいきの粘液と混ざってひどい事になっている。
「ダメだ。アオキはここだけでイけるだろ?」
酷薄な言葉とともに、ずいきが最奥に叩きつけらると小刻みに揺らされる。
「んっ…………っああぁああっ」
アオキは猫のように背中をしならせながらビクビクと痙攣すると、精を出さずに達した。
射精を伴わない極みは長くしつこく身体に残る。
いつまでも達しているような、長い快楽が続くせいか肉体も過敏になり、少し触れられただけで感じてしまうのだ。
けれどアオキは知っている。
こうして出さずに達した後のアオキの身体に、彼がご褒美をくれる事を。
「紅鳶様…あっ…入れてくださいっ…………っ入れて…奥まで突いて…くださいっ」
待ちきれなくなったアオキが強請るように尻を突きだす。
紅鳶はうっすらと笑みを浮かべると鳶柄の襦袢を開き、自らの怒張を取り出した。
そこら既に筋を際立たせ、天を貫かんばかりに勃起していた。
紅鳶の逞しい男根を見たアオキの瞳が期待と興奮に潤んでいく。
後孔の奥が物欲しげに収縮し、ずいきを力いっぱい食い締めた。
「待て、紅鳶」
突如として制止の声が響く。
見ると、懐手に無表情の楼主が翁面の男衆を顎で促していた。
「翁と代われ」
紅鳶の低い唸りが響く。
「邪魔立てするなと言ったはずだ。こいつは俺の…」
「俺の…?何だ?勘違いするなよ、そいつはしずい邸の娼妓だ。客から買われ、身体を売って稼ぐただの商品だ。手前はただの教育係りであってそれ以外の感情は許されねぇ。わかったらさっさと代われ」
紅鳶は暫く黙って楼主を睨み付けていたが、やがて舌打ちをするとアオキを離した。
直ぐに翁が回り込みアオキを仰向けにすると細腰を掴み自らの腰の上に乗せる。
下腹部だけが不自然に浮き上がり、無防備になったアオキの後孔に翁のグロテスクにぬるついた怒張が押し込まれた。
紅鳶とは違う形の怒張はずいきの粘液ですぶ濡れになったアオキの媚肉を掻き分けながら、奥へ奥へと進んでいく。
再教育が始まってから、紅鳶ではないものに身体を貫かれるのははじめてだった。
しかし、紅鳶のものではないとわかっているのに肉体は勝手に快感を拾っていく。
そこかしこに散らばる感じるポイントを突き上げられ、揺さぶられ、アオキは何度も泣きわめきながら達した。
リングによって塞き止められていた陰茎を解放され、蜜を噴き上げながらも扱れた時は本気で死ぬかと思った。
そうしてようやく翁の怒張が引き抜かれた頃にはアオキの身体からはすっかり力が抜け、意識も朦朧としていた。
ぽっかりと開いた後孔からは翁の出した大量の欲望がコポコポと溢れている。
「いい仕上がりじゃねぇか。これなら来週にでも座敷に戻れるぞアオキ。次は最終テストをする。明後日だ。相手としてゆうずい邸から一人連れてきてやる」
脱力したアオキに向かって楼主は満足げに微笑むと、今度は紅鳶を見た。
「どいつがいいと思う?」
楼主の言葉に紅鳶の眉間のしわがますます深くなる。
「なぜ俺に聞く」
「特に意味はねぇよ」
「……青藍か露草あたりでいいだろ」
吐き捨てるように呟いた紅鳶の答えに楼主は珍しく肩を揺らして笑った。
「随分とお優しいじゃねぇか?以前のお前なら名指しなんてしなかった」
紅鳶の凛凛しい顔がみるみる怒りに染まっていく。
しかし、楼主は怖じ気づくどころか煽るように紅鳶を見据えると視線はそのままに翁に告げた。
「月白だ。明後日までに奴を手配しとけ」
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