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アオキ26

「あっ、あっん……っん」 鼻から抜ける甘い吐息と喘ぎが蜂巣(はちす)に響く。 「ここがいいんだろう?かわいい声が出てるぞ」 男の長大なものを後から咥えこまされたアオキは、小刻みに打ちつけられる腰の動きに陶酔して喘いでいた。 男の手管は純粋に上手かった。 それこそ、アオキが今まで相手をしてきた客達の中では一番だと思う。 こちらのいい場所を的確に捉え、適度な力加減でじりじりと焦らしながら、ゆっくりゆっくり犯してくる。 なるほど、こんなのを一晩中されたら娼妓泣かせと言われても仕方ない。 しかし、特別研修を終えたアオキの肉体は中丸のねちっこいセックスにも素直に反応を示し、喜びに震えていた。 何をされても感じてよがるアオキの肉体を前に、中丸も満足げに笑っている。 「あんた、本当にかわいいな。中の具合いもすこぶる良い」 どこかで聞いた台詞を言われて、アオキはそっとほくそ笑む。 あれは初めて紅鳶に快楽を教えてもらったときだった。 アオキの頑なだった肉体を無理矢理抉じ開けて、己の覚悟の足りなさを真っ直ぐに突きつけてきた。 後生大事にしてきたアオキの意地はあっという間に捩じ伏せられ、代わりにここで生き延びるための根性を叩き込まれたのだ。 今思えば強引だなと思うやり方だったが、あのまま腐っていたらきっともうアオキはここにはいなかったかもしれない。 昔ここで役立たずと呼ばれていた娼妓が、どこぞの海外に性奴隷として売り飛ばされたことがあるという噂話を耳にしたことを思い出したからだ。 「ああ、んんっ…っ、旦那さまが、お上手だから……」 つるりとそんな言葉が滑り出て、アオキは自分でも驚く。 これも再教育の指導とやらのおかげなのだろうか。 「かわいい事を言う。よしよし、今夜はじっくりたっぷり可愛がってやるからな」 中丸は獰猛な光を瞳に宿しながらアオキの細腰を掴むと、思い切り腰を打ちつけてきた。 「ひぃっ…あっ、ああっ、激し……っ」 ガツガツと肉をぶつけられ果実を潰したような音と共に、結合部から露が迸る。 脳裏に浮かんでいた紅鳶の姿もあっという間に消え去り、身体を貫かれる快楽で頭がいっぱいになっていく。 こうして気持ちのいいことさえしていれば、誰かを思い出して胸が痛くなることも、思い出に耽って溜息を吐くこともしなくてすむのかもしれない… 蕩けた頭の中で浮かんだのはそんな事だった。 それから、アオキは熱心に仕事に打ち込むようになった。 新規での客に加え、一度相手をした客からの指名客も多くなり、週末は一ヶ月先まで予約で埋まっているという。 あの娼妓泣かせの中丸もすっかりアオキの上客となっていた。 それと同時に仲間内からの風当たりはますます強くなっていったが、アオキは持ち前の精神でなんとか持ちこたえていた。 一人は寂しかったが、時々ふらりと絡んでくるツユクサがアオキの心を和ませていたからだ。 相変わらず口は悪いし態度は冷たいが、陰でヒソヒソと言われるよりは真っ向から毒を吐いてくるツユクサの方がいっそ清々しくていい。 彼もまた、人と群れない性格ゆえか陰口を叩かれていたがその立ち振る舞いは飄々としていて美しかった。 ある日の夕方、しずい邸のアオキの部屋の扉を誰かが叩いた。 湯浴みを済ませたアオキは濡れた髪もそのままに扉を開ける。 そこに立っていたのは意外な人物だった。

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