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雨の日に3

舛花(ますはな)はアオキを見下ろすとにんまりと笑った。 掴んでいたアオキの両手をどこからか取り出した紐で後ろ手に縛り上げると、今度は頭をぐいぐいと押してくる。 力では敵わないとわかっていながらも、好き勝手にされるのはごめんだ。 必死に抗おうとするが、アオキは結局強制的に跪かされてしまった。 湿った土の上に尻餅をついたアオキの顔に舛花の下半身がぐいっと押し付けられる。 「ほら、舐めてよ。しずい邸の子ならみんな喜んでしゃぶるんだよね?やってよ、ほら」 「いや…っやめ…っ」 顔を背け抵抗するアオキに業を煮やしたのか、舛花が乱暴な手つきでアオキの髪を掴んできた。 「いやいや期かな?いいね。最近従順な子ばっかりしか相手してなかったからそういうのすっげ〜燃えちゃう」 ペロリと舌舐めずりをする舛花の仕草にいよいよ恐怖が襲ってくる。 怖い。 いやだ。 数週間前までアオキはしずい邸の一番手として娼妓をしていた。 男に抱かれるのが生業で、それは当たり前のことだと思っていたのに今ではもう少し触れられるだけで嫌悪しか感じない。 その理由はアオキにはもう生涯添い遂げようと心に決めた人がいるからだ。 年季が上がってから決めたのだ。 彼にしか触れたくないし、触れられたくないと。 そのために必死になってここまでやってきたのだから。 「うっ…紅鳶、様…」 気がつくと愛しい人の名前を口にしていた。 「あー、もしかして紅鳶に憧れてここまで来ちゃった感じ?残念、あいつならもういないよ」 舛花(ますはな)はしたり顔でそう言うと、淡い青色の着流しの上前を捲り上げた。 ボクサータイプの下着をずり下ろすと、自らの性器を惜しげもなく曝け出す。 大きくて赤黒い男の凶器は既に半分ほど勃ちあがり、表面にはいくつもの筋張った線が走っていた。 男は片手でそれを持つと、得意げな顔で近づけてきた。 「それより俺といい事しよ、ね?紅鳶なんかより絶対上手いからさ。あは、綺麗な顔に擦り付けちゃおうかな」 雄臭い匂いに吐き気と嫌悪がこみ上げてくる。 口を開くと無理矢理突っ込まれかねない。 アオキは頑なに口を閉じると懸命に顔を反らした。 しかし抵抗も虚しく、逃げ場のないアオキの顔に容赦なく男の性器が擦り付けられる。 「ほらほら、口開けて。大好きでしょ?フェラ。いつも客にやってるんでしょ?」 「んんっ…っ…っ」 下卑た言葉で揶揄しながら硬くなった肉棒で唇を抉じ開けようとしてくる。 悔しくてたまらなかった。 仕方がない事とはいえ、しずい邸の男娼がそんな目でしか見られていないことが。 こんな風に下卑た目で見られていることが。 彼らも彼らなりに誇りと信念を持って働いている。 それに皆、好き好んで男娼になったわけではない。 そうしなければ生きていけないから、そこに適応するしかなかったのだ。 アオキはふつふつと怒りがこみ上げてくるのを感じた。 こんな奴に負けてたまるか。 こんな男なんかに、今も毎日を懸命に生きているしずい邸の男娼たちをバカにされてたまるか。 アオキはキッと舛花を見上げる。 それまで頑なに閉じていた口を開くと自ら男の肉棒にしゃぶりついた。

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