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生活4

相変わらず余裕綽々なバカラに親指で唇を指の腹でなぞられ、俺は離れていこうとしたその指を追いかけ捕らえる。 バカラの指を口に含み舌を絡めて、なけなしの理性で挑発をしてみた。 「おいで…司」 その挑発に乗ってくれるらしく、ふっと口許を綻ばせたバカラの低く甘い声に俺は胸の高鳴りを感じていた。 名前を呼ばれた事でついに脳みそがドロッと溶ける様な幸福感に満たされ光に集まる虫の如くバカラの腕の中に吸い寄せられる。 「んー。はぁっ」 バカラと舌を絡ませ合い、バカラの腕が俺の身体を優しく抱き締めてくれていることに嬉しさが込み上げてくる。 ぱちゅんぱちゅんと肌がぶつかる音が部屋に響き、俺はスプリングの力を借りて身体がふわふわと揺れる。 「そんなに私のが欲しかったのかな?健気に締め付けているぞ?ん?」 「ふぁっ、んっ、やぁ」 尻を大きな手で掴まれ強制的に腰を上下に動かされるとびくんと身体が跳ねあがってしまう。 バカラの首筋に顔を擦り付け、内部から駆け上がる心地好さに翻弄される。 「やぁ…こ、し止ま…らなっ」 「今日は司がしてくれるんだろう?だから止まらなくて正解さ」 「あっ…そっ、かぁ…あっ、あぅ、んっ」 バカラの手が尻から離れていっても腰が自ら勝手に動き、気持ちいいのがずっと続く。 俺はそれが怖くなりバカラの更に首元に顔を埋めているとバカラが耳に息を吹き掛けてきた。 息と一緒に吹き込まれる言葉に確かにそうだと溶けきった頭で妙に納得してしまって、ゆるゆるとした動きだった腰を一息ついて激しく上下に動かし、バカラを逝かせようと躍起になる。 「そろそろ出すぞっ」 「う、むぅ!」 腹の中で拡がる熱に俺もバカラの腹に吐精してしまった。 バカラの熱に一瞬意識を手離しかけるが、愛おしげに唇を寄せられると疲労感よりも胸がきゅんきゅんして自ら進んで舌を絡ませた。 脳髄にまで響く、くちゅくちゅという舌を絡ませる音が俺の思考を溶かしていく。 「司のここはまだまだ元気だね」 「ひゃっ!」 キスのせいで脱力していると、バカラがからかうように俺の勃ち上がっているぺニスを指でピンっと弾く。 すると腹の中にいるバカラを自然と締め付けてしまうことになる。 バカラのペニスが腹の中でむくむくと反応してくるのに、またしても何とも言えない幸福感を感じてしまっている自分がいた。 バカラと住むようになってから、俺はどんどんとバカラに甘えるようになって確かに和哉の言うように雰囲気が変わったかもしれない。 まだ解決していない問題は沢山あるのに、バカラと居れば全てなんとかなるのではないかと最近では思ってしまっている。 「はぁー」 身体を拭かれスッキリしたところで大きく息を吐いた。 軽く賢者モードに陥ってはいるが、バカラの鍛えられた背中を見ているとふふふっと笑みがこぼれる。 「犬くんにネタばらしをされてしまったのは失態だったが…言うのが遅くなってしまってスマナイ。君はもう私のパートナーだ。だから君が決めてきた就職はこちらで辞退させてもらったよ」 「えっ!そんな!!」 手に小さな箱を持ったバカラがベットに戻ってくると、俺は手の中の箱の事より言われた言葉が衝撃的過ぎて動揺してしまう。 散々肌をあわせていると、恥ずかしながら今更パートナーと言われる事に違和感など無かった。 しかし、今はそれ処ではなくバカラの言葉に目の前が真っ暗になる思いだった。 「司には私の側に居て、私を支えて欲しい」 腕を取られ、手の甲にバカラの唇が押し付けられる。 それを呆然と見ているとバカラが手に持っていた小さな箱の蓋を開けた。 「遅くなって本当にすまなかった」 そこには銀色に輝くリングが2つ入っていた。 俺は何も返事をしないままで居ると、右手を取られ薬指にそれを通された。 「右手?」 「日本では左手が一般的だが、私の育った国では結婚指輪は右手にするんだ」 右手の指輪を不思議そうに見ていると、バカラが後ろから抱き締めてくれた。 「司にも頼めるかな…」 バカラの声にドキドキしながら、俺も箱から指輪を取り上げる。 バカラに習って右手を持ち上げると、薬指に指輪を通した。 ちゅっ 「これで本当の意味で司は私のものだよ」 右手の指輪に口付けられ手を握られる。 もう、俺の頭は混乱してしまってただじっと様子を見ているしか出来なかった。 「まぁ…子猫を手放す気ははじめからなかったけどね」 「んあっ」 後ろから唇を奪われ、ぼんやりしていた頭は更に霞がかかったように正常には働かなくなってくる。 「おや?また私を誘っているのかい?ん?」 「あ…もう一回…」 バスローブから少し出ていた肩にちゅうっと強く吸い付かれ、痕が残される。 一瞬の痛みの後に、舌を這わせるぬるついた感触にバカラのバスローブの裾を握りしめる。 「やぁ…あっ、あぁ…バカラさ…」 「私の名前はブラッドだ…二人の時はそう呼んで欲しいね」 肩や首筋に吸い付かれながら左手では胸を、右手では下半身を弄ばれバカラ…いやブラッドにすがりつくのがやっとだ。 ブラッドが小さく犬くんには何かお礼をしなくちゃねと不機嫌そうに笑っていたのは見なかったことにする。 きっと迂闊な和哉が悪いんだろう。 + 朝起きると腰が重だるく、起きるのに一苦労する。 キッチンからは珈琲の香ばしい薫りが漂ってきていた。 「おはよう…ございます」 「やぁハニーまだ寝ていてもいいんだよ?」 俺がキッチンに向かうとバカラがテーブルにブレックファーストを用意していた。 ハニーと呼ばれたのはあえて無視しておく。 「凄いですね…」 「今日は祖母直伝のパンケーキさ」 皿にはきつね色で綺麗な円のパンケーキとベーコン、不思議な形の卵に黄色のソース。 付け合わせにはカラフルなサラダが添えられている。 よくテレビとかでしているお洒落な朝食というやつだ。 「エッグベネディクトだよ」 「随分…難しい名前なんですね」 「さぁ、そんなところに立ってないでどうぞハニー」 俺がおかしそうに笑うとバカラも楽しそうに微笑む。 腕を引かれ、椅子に誘導される。 椅子に座ると湯気のたちのぼる皿が目の前に出される。 部屋に差し込む光が当たってブルーの瞳が更にキラキラ輝いている。 それと右手には銀色の指輪も光が当たって光っているのが嘘の様だ。 それらと朝食を交互に見ると、何とも現実味のない幸せな空間に自分が居ることが信じられない思いだった。 ブラッドがスープカップに入ったコンソメと思われる黄金色のスープを机に置いて自分も席についた。 カップから立ち上る湯気が朝日に反射して小さな虹ができる光景に俺は目を細める。 今頃父さんはどうしているだろうか。 不意に襲ってくる不安感にきゅうっと胸が締め付けられ、右手で胸元を押さえる。 「父親のことかな?」 一瞬動きを止めた俺にバカラは目ざとく気がついてふっと笑った。 机の上に投げ出されていた左手を優しく握られる。 ブラッドなりの慰めなのかもしれない。 「もう少しで会えるよ…もう少しでね」 「え…本当ですか!」 「あぁ…本当だとも。さぁ、私特製のパンケーキの味はいかがかな?」 ブラッドの言葉に、詳しい事は何一つ知らされていないのだが少し安心した。 俺はブラッドに勧められるままパンケーキにおそるおそるナイフを入れると少し弾力があるのかナイフが跳ね返る。 ナイフに力を入れてパンケーキを一口大に切ることに成功したので、まずは何も着けずに口に入れた。 ベーコンの塩気が移っていたようで、ローストしたベーコンの芳ばしい香りが鼻を擽る。 パンケーキは俺の予想に反して甘くなくもっちりとした食感だった。 俺が口を動かしているのを面白そうに見ているブラッドの食べ方の綺麗なこと。 俺は観察されているのをあえて無視して食事を続けたのであった。

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