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第2話

荒谷の家に着き、玄関の前でミュウを待つ。 荒谷はすぐに連れて来てくれた。 「ミュウ、おいで」 受け取って、温かい体を抱きしめる。 拾ってから3ヶ月。ずいぶんと大きくなった。 餌をやったり、ふわふわの体を撫でたり。 でも、荒谷との会話はあまり弾まなかった。 仕方なく僕はミュウを抱きあげて立ち上がった。 「……ねぇ、荒谷」 荒谷は玄関のドアにもたれ掛かり、腕を組んで僕を見ていた。 腕の中の温かい生き物に力をもらう。 「荒谷のことが好きなんだ。僕と付き合ってくれない?」 荒谷は驚いて目を見開いている。 爽やかな秋の風が、二人の間を吹き抜けた。 荒谷が動いたのは突然だった。 僕に近づいて腕を取る。 「ちょっと来い」 荒谷は僕の手を引いて家の中に入った。 何度か来てるけど、荒谷の家にあがるのは初めてだった。 ミュウは僕の腕から飛び降り、どこかへ行ってしまった。 黙ったままの荒谷が怖かった。 連れて来られたのは、荒谷の部屋だった。 「俺のこと好きって言ったよな?」 荒谷は念を押すように聞いてきた。 「うん」 その迫力に気圧されるまま、僕はうなずく。 「付き合って欲しいって言ったよな?」 「……う、うん」 「じゃあ、俺とキスしたり、セックスしたりしても平気ってことだよな」 頭の中が真っ白になった。 あっ、荒谷とキス? せっ……セックス!? 「えっ?ええっ!?」 正直なところ、そこまでは考えてなかった。 「付き合うって、そういうことだよな?覚悟してんだろ?」 「え?あっ……うん」 勢いで頷いたけど、心臓が口から飛び出しそうなくらいバクバクしていた。 「じゃあ、今ここで脱げよ」 びっくりして目を見開く。 「えっ?ここで?」 声が変に裏返った。 もっ、もしかして。 いっ、今から、するの? 「いいから脱げ」 荒谷が冷たく宣言する。 僕は覚悟を決めて、制服のボタンに手をかけた。上からひとつずつ外していく。 夏のシャツを脱ぎ終わって床に置いた。 「タンクトップとズボンもな」 荒谷には逆らえない。 顔が火を噴きそうに熱い。 僕は言われるまま脱いで、下着だけを残して裸になった。 これも……かな? 下着に目をやる。 「それはいい」 荒谷は机の引き出しから、何かを探しているようだった。 「あった」 メジャーを手に取ると、僕の側まで歩いてきて、いきなり僕のサイズを測り始めた。 頭周り、首周り、肩幅……。 荒谷の行動が理解できないまま、僕は硬直してされるがままになっていた。 「お前、身長は?」 「164センチ」 「足のサイズは?」 「25センチ」 「ほら、ちゃんと姿勢よく。胸張れ」 肩を掴まれて、肩甲骨の間を強く押される。 「うわっ」 いきなりで驚く。 「手、上げて」 腕周り。胸囲……。 荒谷が触れるところが熱い。 息づかいも近くて、胸の鼓動が速くなる。 「お前の肌、綺麗だ。……乳首も、ピンク色なんだな」 感心したようにつぶやいて、荒谷の指の腹が、一瞬だけ乳首に触れた。 「ンッ……」 押し潰されたわけじゃないのに、ゾクッとうずいて。初めて味わう感覚に戸惑う。 荒谷は表情を変えないまま、再び僕のサイズを測り始めた。 ウエストやお尻周りまで測られて。 「終わったぜ」 荒谷がふと気づいたように、僕の股間に目をやった。 「お前、サイズを測られるだけで勃ったの?」 ハッとして羞恥に眼を伏せる。 僕の股間は下着を押し上げて、ゆるくテントを張っていた。 情けなくて泣きたくなる。 「……見るなよ」 両手で覆い隠したけど、荒谷が手首を掴んで 振り払った。 ニヤッと意地悪そうに笑う。 「町田ってやっぱりドMなんだな」 「あっ!」 荒谷の手が、下着の上から僕のものに触れる。 「やだっ。やめて……」 何度か撫でられて、僕のものはますます大きくなった。 荒谷の手が下着の中に潜り込んできて。 僕のを直接握りしめる。 「ひあッ」 そのまま上下に扱(しごか)れた。 キツすぎず、緩すぎず絶妙な力加減で。荒谷が手を動かすたび、そこに快感の熱溜りができた。 あ、やだッ。 気持ち、イイ。 すぐにでもイってしまいそうだった。 荒谷がもう片方の手で、僕の下着をずり下ろした。 「あっ!」 性器がむき出しになる。荒谷の手に捕らえられたままのそれが。 荒谷が揶揄するように笑う。 「見てみろよ、町田。先っぽから我慢汁がダラダラ垂れてる」 「!」 言われるまま下半身を見て。僕はすぐに後悔した。 少し皮を被った先端の丸みは淫らにヒクついて。先走りの液を鈴口からこぼしながら、荒谷の手を汚していた。 自分でも目を反らしたくなるほど卑猥で……。 「あぅッ、ンッ、ああッ……」 荒谷が手の動きを速くする。 快感の渦に追い上げられて。 「やだッ、やめ……ッ、も、出ちゃ……」 荒谷の手を制しようとしたけど、許してくれなかった。 彼の体にしがみついて。 「あッ、ああぁ――ッ」 突き上げる射精感に抗う術もないまま。 僕はイってしまっていた。 荒谷の体から手を離して、そのままズルズルとその場にへたりこんだ。 何度も荒く息をつく。 「イくの速ぇよ」 荒谷は受け止めた精液を、ティッシュで拭ってゴミ箱へ捨てていた。 「ドMで自分をいじめてたヤツが好き。変態かよ?」 僕を冷たく見下ろす荒谷の視線が痛い。 そんな顔を見るのが辛くて、俺は目を背けた。 何を言われても返すコトバもない。 荒谷に告白すると決めた時から、ある程度の覚悟はしていた。気持ち悪がられるなり、罵倒されるなり。バッドエンドも。 こんな目にあうとは思わなかったけど……。 何でこんなヤツ好きになっちゃったんだろう?そう思っても遅いんだ。好きなものは好きなんだから。 僕の前に影が落ちた。 荒谷がしゃがみこんで、僕のあごを掴み、顔を上向かせる。 「お前、やっぱ最高だな」 荒谷と目が合う。 ニヒルな笑いは浮かべてるけど、さっきまでとは雰囲気が違う。 その瞳には嘲笑も揶揄もなくて真剣だった。 僕の好きな荒谷の顔だ。 そんなことを思いかけた時。 「いいぜ。お前と付き合ってやる」 「えっ?」 僕は目を見開いた。 今、付き合うって確かに聞こえた。 荒谷が!? 信じられない!! 「ただし、条件がある。今度の学園祭のハロウィンコンテストで、サキュバスの仮装しろ。それで優勝したらな」

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