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第6話

「あーごめんごめん。大丈夫だよ、ちゃんと先生が助けてあげるからね。エイ!」  真剣な顔でなにやら呪文を唱えるとその子の狼の耳を取った。帽子の下のザリザリの坊主頭をぐりぐりと撫でながら安心させるように微笑んだ。 「ほら、もう大丈夫」 「ほんとだー人間に戻った!」  純真な子供たち。単純に人間に戻ってご機嫌に笑っている。だけど大神はそうはいかない。エイ!っと耳を引っ張ったって、それは痛いだけでどうやったって人間には戻れない。 「それじゃ、次はお菓子をもらいに行こっか」  輪の中の柊が手を叩くとさっきまでの怯えがうそのように子供たちは大喜びで飛び跳ねた。 「よーし樹先生におねだりしよう。なんていうんだっけ?」  せーの、の掛け声で子供たちが大神に向かって叫んだ。 「trick or treat!」!  今はちゃんと人間の形で先生をしている大神は気持ちを切り返すと、持っていたかごからお菓子をひとりひとりに渡していく。モミジのような柔らかい手がそれを受け取り、嬉しそうに笑った。 「先生ありがとう」 「お化けに気をつけて帰るんだよー」 「はーい」

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