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第8話
そういえば、と思い出し、聞いていいのかどうか迷った。
さっき柊が読み聞かせていた物語。あれはなんていう話なのだろう。もしかして大神の魔法を解く手がかりになるかもしれないと淡い期待を持つ。
だがどうキッカケを持ちだすと自然なのだろうか。まさか「自分の身上によく似ているため」なんて言えるわけがない。
モダモダとしていたら小さく笑う声が聞こえてきた。見ると柊がおかしそうに大神を見つめている。
「なんか、変なことしましたか? 俺」
「いいえ?」
でもクスクスとした笑みはそのままだ。
「なんですか! 気になるじゃないですか」
「いや、可愛いなって」
「は? 可愛いって俺がですか?」
何を言っているんだこの人は。高身長なうえ体も大きい自分は可愛いという言葉にはかなり縁遠いところに存在している。そのうえ狼だ。化け物だ。
「それを言うなら柊先生じゃないですか」
思わずつぶやくと柊は驚いたように眼をしばたかせ「僕ですか?」と聞いた。
しまった。思わず本音が出てしまった。慌てたように口を押えても、もう遅い。柊ははにかむように笑っている。だからそういうところもマジ天使!と大神は吠えそうになる。
華麗な姿に純真な心。大神の対極にいるこの人に憧れてやまない。自分みたいな穢れた存在が近づいていいものじゃない。
だけど柊は口元をきゅっと上げると、ゆっくりと大神に視線を合わせた。
「でも、もしかしたら僕が悪い魔法使いかもしれませんよ?」
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