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②
「そういう佑月先輩こそ……なんて言うのか……」
陸斗は口ごもると、佑月の全身に視線を走らせる。
「エロいですね……。顔もオレらと一緒で特殊メイクされてて誰か分からない状態なのに、エロいっす」
「うんうん! 成海さん私よりもセクシーですもん」
海斗が照れたように言うのを、花も同意し大きく頷いている。佑月は何とも微妙な面持ちで自身の身体を見下ろした。白のワンピース風の衣装は丈が短く、そこから細い脚がスラリと伸びている。白い網タイツが更に卑猥さを増長させていることは否めない。そして頭にはこちらも白の帽子。そう佑月は一昔前のナース姿になっている。ナース服には飛び散った血糊が付いており、注射器擬きには血を思わせる赤い液体が入っている。こんなナースに看病などされたくないものだ。
しかも何故男である佑月がナースなのか。三橋家が用意したスタッフに問答無用でナース服を渡されたときは、流石に佑月も絶句した。しかし仕事である以上文句など言えない。渋々と着替えたが、顔などに本格的な特殊メイクをされると、佑月の面影は丸っきりなくなってしまった。目にも白に近い虹彩のコンタクトレンズを入れているせいでまさにホラーとも言えるが、きっと知り合いに会ったとしても佑月だと分かる人間はいないだろう。それが唯一〝女装〟への抵抗を軽減させてくれていた。
「じゃ、そろそろみんな持ち場に行こうか」
「はい」
佑月の号令で三人は用意されていたシャンパンが入ったグラスをトレイに乗せ、それぞれ広い会場内へと散って行った。
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