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⑫
何を言っているのか理解するまでに、佑月は須藤の肩に担がれてしまう。
「ちょ! おい! 下ろせよ」
体格差があるとはいえ、こうも簡単に担がれるのは男としていい気はしない。それは須藤自身もよく分かっているはずだ。それでもこうして佑月のプライドを傷付けてまで担ぐ理由は……。
「っ……」
少し乱暴にキングサイズのベッドへと倒される。須藤の機嫌が全く直っていないせいだ。
「お前に声を掛けていた男、あれは処分しなければな」
仰臥の形になった佑月の太腿に須藤が容赦なく跨る。痛さを訴える前に、聞き捨てならない言葉が耳に入り佑月は驚愕に目を見開く。
「……いや、処分って……。その冗談笑えませんが」
「俺が冗談を言ってるように見えるか?」
「……」
見えます。本当はそう言ってやりたかった佑月だったが、須藤の目が本気だと分かるものだったために、冗談を言える雰囲気ではなかった。
「向こうは初め、俺のこと女だと思って声を掛けただけであって……」
「〝初め〟はだろ?」
自分の失言に佑月は舌打ちをつきそうになる。この男の嫉妬は軽く常軌を逸する。佑月に声を掛ける男はみな命懸けだ。ナンパなら直ぐに断る事が出来ても、仕事関係の相手ならばそうはいかない。だから佑月は仕事先で須藤と会ったりしてしまうのは嫌なのだ。
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