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第2話

「いらっしゃい。よく来たね」 丸く切り抜かれた二つの穴から覗く目は最初、ぼうっとしていたが、こちらの声にはっと反応し視線を向けてきた。 飴玉のように丸く可愛らしい瞳だった。マズルカは穏やかに笑い、テーブルの椅子を引いた。 「お菓子はたくさん用意してある。たんと食べてお帰り。勿論、持って帰る分も包んであげるよ」 少年はきょろきょろと家の中を見回した。ウッド調の清潔な部屋に、一緒にいた友達がいないことを不思議に思っているようだが、「クッキーは好きかい?」と訊ねれば、双眸を再びこちらに向け、水面のようにキラキラと輝かせる。ひらひらと白い布をはためかせ、椅子に座ってくれたので、マズルカは笑みを濃くし、彼の向かいに座した。そして、様々なかたちや色のクッキーやプチケーキを盛った大きな器を、彼に差し出した。 「わああっ!」 少年が華やかな歓声をあげた。お化けに模した格好をしているため、顔のほとんどが布に隠れて見えないが、きっと眩い笑みを浮かべているに違いない。布の下から枝のように細い腕がにょきっと出てくる。小さな手は人型のクッキーを取り、布の中に引っ込んでいった。 サクサクと軽やかな咀嚼音が聞こえてくる。 が、しばらくして、少年はどさりとテーブルに突っ伏した。 マズルカは静かに立ち上がると、ぐっすりと眠りだした少年を抱え、キッチンの隣にある部屋へと向かった。

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