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第3話

10月31日。人間界ではハロウィンという催しがあると知ったのは、いつのことだろう。 毎年この日に家ごと人間界へ向かい、お菓子を求めて彷徨う子供を一人誘拐しては、選ばれざる同伴者の記憶を消すと同時に、魔法界に帰っていく。 その子供をどうするのか? 魔法使いらしく、食べてしまうのだ。 100年前から毎年欠かさず、食してきた。入眠作用のある薬草を混ぜたお菓子で子供を眠らせ、その間に安楽死させる。恐怖と苦痛を伴う殺め方をすると、人肉は不味くなってしまう。なので、致死作用のある魔法をかけ、一瞬で息の根を止めてから、その躯を食べ易い大きさに解体し、シチューやソテーにする。 じっくりと入念に味つけし、極上の味に仕上げる。料理は美味しい方がいいに決まっている。手間はかかるが構わなかった。 人間の子供を一人食べるにつき、魔法使いの肉体は1歳若返る。マズルカは99年もの間、子供を食べ続けていた。お陰でもうすぐ125歳となる現在も、25歳の身体のままでいられる。若い魔法使いのまま、生きていられるのだ。 記念すべき100人目の犠牲者と共に解体部屋へと入った。ふかふかのベッドに少年を横たえる。まずはここで殺してから冷んやりとする解体台に運び、バラバラにする。 少年が被っている布をゆっくりと剥ぐ。あどけない表情で心地良さげに眠る姿に、硬い口角を左右に広げた。 ……すべては、あの日の約束を守るため。 マズルカは静かに瞑目した。頭の中で呪文をさらったのち、少年を死に至らしめんと右手を振りかざす。

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