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第7話
「どうしよう」
マズルカは嗚咽を漏らしながら口を開いた。
「どうしよう、ブルース……僕は、とんでもないことをしてしまった……何人もの子供の命を……!」
人間の子供を食べ始めた時からずっと、罪の意識はあった。ブルースの言葉を表層的にしか受け取らず、それに囚われながらも、マズルカは自らの行いを正当化できなかった。
味や食感が損なわないために、子供を安楽死させてきたわけではない。どれだけ惨虐に殺めても、それが変わることはなかった。
本当は、子供が苦しむ姿を見たくなかったのだ。
魔法使いは、その気になれば人間の子供くらい丸飲みできる。調理などする必要はない。
それでも、殺めた子供を手の込んだ料理にしてきたのは、せめて美味しく食べてあげたかったから。自らのエゴのために犠牲にした子供が、そうするに値する存在だと思い込みたかったから。
どれもこれも、詭弁に過ぎない。
毎年、見た目も味も申し分ない料理を食べ進めるうちに、自然と涙が溢れて止まらなくなる。肉体は生き生きとするのに、心は締め潰されそうになる。
食後はいつも、顔を覆いさめざめと泣いていた。……ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……。胃の腑におさまった子供への謝罪が止まらなくなる。
それでも、食べるのをやめなかった。
「そうだ、君は大罪を犯した。私は、その共犯者だ」
「違う。貴方は何も、何も悪くない……愚かなのは、僕一人だけだ」
ブルースは小さくかぶりを振った。後ろに撫でつけたブロンドの髪は真っ白になり、萎びた草のようにへたれていく。口の周りには枝垂れた白髭がたくわえられ、顔の半分を覆っていた。
「君の罪は私の罪だ。だから、君一人に背負わせたまま死にたくなかった。……だが、私にはもう償う時間がない」
「ブルース……!」
「一緒に捕まった仲間が死んでいく中、私だけが辛うじて生き残った。130歳まで生き長らえたのは、必ず君の元へ帰るという意地があったからだ。……すまない、今の私はそれを成しただけで精一杯だ」
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