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第22話
車を見送ると、遊歩道を並んで歩き出した。この遊歩道からすでに旅館の敷地なんだそうだ。もう現時点で相当とんでもない旅館だというのがわかる。
竹林の荘厳さに圧倒されて、得体も知れない怖さのようなものも感じていたけれど、テーマパークに来たようなワクワク感もある。
景色も変わりないけれど、不思議なもので全然飽きることなく景色を眺められた。鳥の声に風の音、どれも優しく柔らかくて、歩いているだけで癒されるようだった。
「日本人は贅沢だな、こんな美しい風景を大昔から見てきたんだろう?」
彼なんか俺以上に感心しながら歩いている。終始キャリーを引かずに取手を持って歩いているのは、彼もこの景観にキャリーの車輪音が邪魔だということを感じているからだろうか。
「日本以外でも竹林を見たことはあるが、ここは本当に素晴らしい」
「そうなんだ。なんだかすごい旅館みたいだから、ここは日本の中でもかなり手入れされてる方の竹林だと思うけどね」
「なるほど、それなら世界一かもしれないな」
それを1週間借り切りというのだから、バチが当たりそうだ。
「気持ちがいい」
日本語だったり英語だったり、さっきからそればかりが自然と口をついて出る。彼は横目で俺を見て、優しく頷いていた。
竹林に迷い込んだみたいに延々と歩き続けること15分。
さすがに竹林も見飽きた頃、ようやく古いお寺の門みたいな、デカくて古い茅葺き屋根の門が見えて来た。
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