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第25話

「女将さん、かな?」 引き寄せられるようにそちらに歩く。 「オカミってなんだ?」 「うーんと、旅館の女店主みたいな感じ?」 「ほう、こんな素晴らしい場所を仕切るのが女性とはな、恐れ入ったぜ」 適当な説明をしながら、徐々に着物の人と距離が縮んでいく。 目の前に来ると、気品のあるオーラが漂っていた。 60代くらいの、目のきりりとしたおばちゃんだった。漂ってくる雰囲気からは自信に満ち溢れていて、この旅館の気品と柔和さをそのまま体現したような感じがする。 「ようこそお越しくださいました」 その言葉はかなり流暢な英語だった。 再度深々と頭を下げられる。 「数ある旅館の中から当館を選んでくださいまして誠にありがとうございます。私が当館の女将でございます」 スラスラと話す言葉はクセがなく、ともすればネイティブな彼よりも聞き取りやすい。 「新婚旅行ということで、お2人で1週間貸切でご予約いただいております。どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ。ご結婚おめでとうございます」 新婚旅行に男2人で来たというのに、訝しがる様子もない。 「あぁ、ありがとう。ゆっくりさせてもらいます」 珍しくゆるく敬語の彼も上機嫌だった。庭を眺めて目を輝かせている。 「新婚旅行でこんなに素晴らしい日本のリョカンに来られるなんて、とても興奮しています。本当にサムライが出て来そうだ」 「サムライ?」 女将が軽く首をかしげた。

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