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第26話
「サムライの家にあるような門だと、うちの妻が教えてくれましてね」
いきなり話を振られて背筋が伸びた。
「ちょっ、変なこと言うなって!」
「奥様でいらっしゃいますね、この度はおめでとうございます」
女将はやっぱり動じない。
「あぁ、僕は日本人なので、普通に日本語で大丈夫です」
と、日本語で話すと、気品溢れる表情が、一瞬驚いて緩んだ。
「あら、これは大変失礼いたしました。男性同士のご夫婦で当館にいらっしゃる方は時折おられるのですが、日本人の方がいらっしゃったのは初めてですわ」
「え、そうなんですか?」
今日初めて日本語を話した。家にいるとヤツしかいないから、ほとんど英語しか話さないから。なんだか口が懐かしい。
「ええ。海外からのお客様には結構いらっしゃるんですよ」
「へぇー、そうなんですね」
どうりで俺たちを見ても驚かないわけだ。
「当館は古くからある建物を移築・再建しお客様をおもてなしさせていただいています。ですので、愛の形にも様々なものがあることをしっかりと認識した上で、おもてなしさせていただいているつもりです。私だけではなく、従業員一同、同じ気持ちです」
女将が笑顔で話すことがいまいちピンとこなかったけど、屋内に誘われて玄関入った瞬間、言葉の真意を理解した。
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