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第27話

外の明るさから屋内に入ったから、目が慣れなくて薄暗く感じる。薄暗さを感じさせた要因はもう一つあって、玄関の小上がりもその奥の板間も柱も、全て飴色の艶々とした木材で、しまいにその正面に小さな舞台のようなものまであったからだった。 舞台の上には山と滝の描かれた大きな水墨画の屏風が鎮座していて、玄関をくぐった瞬間に一番はじめに目に入るようになっている。 屏風の奥は大きなガラス窓になっていて、光の差す日本庭園の中庭がよく見えた。天井の電灯は赤みがかっていて薄暗いために、明かり取りが実質そこしかない。正面の隣には、格子戸のついた和室が広がっていて、壁の色は赤で統一されている。 一見ザ・旅館って感じの建物の中で俺が一番違和感を覚えたのは、建物どころか玄関に入った瞬間から漂う独特な雰囲気そのものだった。 「うぉおすげぇなぁ! 日本って感じだ!」 外国人の彼には気づかない違和感。 間違いだったら失礼かもしれないけど、なんとなく、特にその小さな舞台の感じや格子戸の部屋なんか、時代劇で見たことがある。 「女将さん、あの、ここってもしかして」 おそるおそる尋ねてみる。 「ここってもしかして、遊郭、ですか?」 高級旅館だっていうのに、これで間違ってたらマジで失礼かもと思いながら。 女将さんは着物の袖で口を覆いながら笑い、軽く頷いた。 「さすが日本の方ですね。その通りです、当館は江戸時代に遊郭だった建物を移築し、改装して営業している旅館でございます」 「マジか……」 生きているうちに遊郭に来ることがあろうとは。考えたこともなかった。

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