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第29話

部屋に案内してもらった。2階建ての建物は、梁も手すりも柱も、全て玄関で見たような飴色をしていた。廊下は1階も2階もベランダ状になっていて、中庭を囲うように作られた建物全体がよく見渡せた。その中庭も玄関の前庭同様、テニスコートくらいある。 「移築する際に傷んでいたものは作り直したのですが、ほとんどは当時のままの素材を使用しております。こちらの囲炉裏も当時のものです」 部屋に向かう途中、小上がりみたいな空間に囲炉裏が設置されていた。囲炉裏なんて昔話のアニメでしか見たことがない。 「ハニー、これはなんだ?」 囲炉裏なんか見たことないんだろうしな。 「うーんと、暖房器具だし、料理もできるし、みたいな万能な装置だよ。日本の暖炉ってとこかな」 「ほぉ、これが日本の暖炉か、なんだか変わった形をしているな」 スキンヘッドは興味津々だった。 「とても暖かい。これはうちにも設置した方がいいな」 我ながらナイスアイディアだ!と言わんばかりに大きく頷いている。 「うちには無理だ、手入れもしなきゃなんないだろ。大体にして暖炉あるからいいだろ」 「それはそれ、これはこれだろ?」 おもちゃをねだる子供みたいだった。 「だーめ。だったらあの暖炉何とかしてからにしろ」 「暖炉は取り外しできないぜ」 「じゃあダメ」 日本家屋作るならいいって言いそうになったけど、こいつなら本当に作かねないから言わなかった。 「お部屋は2階にございますので、階段をご利用いただきます」 もちろんエレベーターなんてものはない。

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