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第30話

「その昔、花魁が代々使用していたお部屋でございますの。当館で一番贅を尽くしたお部屋となっております」 なんとなくそんな気がしていたけど、やっぱりそういうハイクラスな部屋だったか。しかも花魁が代々とか、ちょっと何か化けて出て来そうで怖い。心霊モノとかそういうのが苦手ってわけじゃないけど、すごく得意でもない。うちのスキンヘッドはそういうの得意なんだろうか。そういえば改まって聞いたこともない。 「ハニー、オイランってなんだ?」 ここでまた解説を入れなくてはならない。 「うーんと、なんつうの、とんでもない高級な娼婦っていうか? そういう人をまとめて遊女って言って……。なんつったらいいんですか女将」 なんだかうまく説明できなくてフォローを頼んでしまった。女将はちょっと妖艶に笑って、そうですね、と言った。 「海外はどうかわかりませんが、かつての日本の色遊びには、今では考えられないほどの格式がございました。一円玉で買えるような身分の低い遊女からお札をいくら積んでもすぐには会うこともできないような位の高い遊女まで、ピンキリだったんですよ」 「ほぅ、日本のそういう話は全く知らなかった」 特に彼はゲイだから、男女のこういう話には余計疎いんだと思う。 「特に、お金をいくら積んでもすぐには会うこともできない花魁というポジションの遊女は、舞い、謳い、そして世の中のことも十分に周知している、頭の良い魅力的な女性でなくてはなりませんでした。そうした女性たちは、当時の男性だけではなく、女性たちにも憧れの的であったわけです」

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