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第33話

入り口は格子状の引き戸で、その奥に小さな庭のような空間が続いている。 奥には襖、そこまで2メートルくらい。石畳が続いている。 「お足元にご注意くださいませ」 格子戸が開けられる。右側にこじんまりとした生け花、左側に鹿威し。鹿威しの上には照明が設置され、日の光のように垂直に差し込んでいる。それだけでも随分すごいけど、よくみると石畳の間に小さな川が流れ、ご丁寧に苔が敷き詰められていて、マイナスイオンの発生具合がとんでもなかった。 「ワォ……なんだこれ、すげぇな、森を持ち込んだみたいだ」 彼がいつになく静かな声で言う。 「すっげぇな、信じらんねぇ。さすが超一流旅館」 旅館に泊まったことがないわけじゃないけど、こんなところに泊まったことはない。 「この空間は、照明をつけた以外はほとんど遊郭当時のままでございます」 女将は軽く笑う。 「室内の方は多少現代風に改装させていただいておりますが、当時の雰囲気を壊さないようモダンなお部屋になっております。どうぞ」 そのまま、襖を開けた。 突然強い光が正面から差し込んで、目が眩む。 軽く目を閉じてゆっくり開くと、襖の奥にも川が続いていた。 「はぁ!?」 手前に小さな石橋をたたえた川、石橋の向こうに六畳ほどの広さや茶室があり、その左側に竹が並んでいる。竹に沿って隣の部屋に続く廊下が見える。

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