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第34話

目の前の風景に呆然としてしまう。部屋の中に川が流れて竹が生えている。 「このお部屋はすぐ裏手のお山の傾斜を利用して造られておりまして、そこの山水を利用して室内に川を造っております。これはこちらに移築してから改めて作り直したものですが、遊郭だった当時も同じような趣向が凝らされていたと聞いております。遊郭を畳んだ後もさらに改装を重ね、このようなお部屋で落ち着いたのです」 「マジか」 信じられない。桁外れの豪華さ。奴の別荘に行った時もだいぶびっくりしたもんだけど、その時とはまたちょっと違う圧倒されるような驚きだ。彼の言葉の通り、部屋の中に自然をそのまま持ってきたような造りは、俺の想像しうる和室の範疇を超えていた。こういう一枚の絵を見ているような気分だった。 「ハニー、とんでもない部屋だな! これが日本のリョカンか!」 彼は目を輝かせるが、これを普通と思われたら事だ。 「ここは高級旅館だからな? お前が探すの苦労するくらいの高級旅館だ、だからこれは本当にクオリティーが高い状態だから、日本の旅館のスタンダードじゃない」 「もちろんさ、ここは日本の最高級のリョカンだもんな!」 女将が絵の中に足を踏み入れる。 「こちらは前室です。お寛ぎいただくお部屋は奥にございます」 そのまま、石橋を渡るように促される。彼とともに石橋の真上を通ると、ここが室内なのが不思議なほど、澄んだ川のせせらぎが聞こえた。 「なんだか心が落ち着く」 橋の上で軽く目を閉じた彼が、いつになく優しく呟く。

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