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第37話
優しい香りの正体はこれだったのか。奥を覗くと、岩風呂まで見える。どちらも大人5人くらい平気で入れるくらい大きい。
「お湯を楽しんでいただきながら、こちらでリラックスしていただけますので、どうぞごゆっくりおくつろぎください」
女将が微笑む。しまいにこの風呂場へは、寝室からも出入り可能とか言うから、本当に至れり尽くせりで申し分ない。しかも源泉掛け流し。
寝室はデッキにつながる竹垣から見て右手の方にある。囲炉裏のある部屋とも繋がっているというので、囲炉裏の部屋経由で案内してもらった。
畳にベッドが埋め込まれていて、2組の布団が並んでいるような状態だった。とはいえ1組分だけでも十分なくらい広々としている。
部屋の雰囲気は隣の囲炉裏の部屋とあまり変わりないけど、ベッドのせいかここだけ急に近代的な感じがする。枕側の壁には大きな丸い障子があって、夜になるとここから星や月を眺めることができるのだそうだ。
で、囲炉裏の部屋につながる引き戸と反対に引き戸があって、ここを開けると川の流れる前室にも出入りができるということだそうだ。ちなみに、どの部屋も入れ替えたばかりとおぼしい、むせ返るような香りの青い畳が敷かれ、30畳近い広さがある。これがこの部屋の全貌だ。
「すっげ。マジですげぇ」
何回すげぇって言ったことだろう。
彼は目をキラキラさせているし、俺は本当に度肝を抜かれて呆然としているし、どちらにせよとんでもない旅館に来てしまったのは間違いない。
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