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第40話
彼はまた俺に膝に座るように促してきたけど、ちょっと甘やかしたい気分になって、やんわりと拒んだ。逆に、自分の膝を叩く。
「ちょっとここに寝て」
「お前の膝に?」
膝枕ってやったことない。あんまりピンと来てない彼を強引に引っ張って、膝の上に頭を乗せた。
男の脚だから、寝心地は良くないだろうけど。
「どう?」
真上から覗き込むと、ぱちぱちと瞬きした彼と目が合う。
「ハニー、最高の眺めだし最高の寝心地だ」
頬骨が思いっきり上がったいい笑顔をする。
「だろ?」
背中を丸め顔を寄せると、少し顔を上げた彼が唇を重ねてくる。
「ハニーに包まれている感じがして、落ち着く」
呟くみたいに言って、そのまま目を閉じてしまう。柔らかいソファーは彼の大きな体をそのまま預けても余るくらい大きい。
「大げさだなぁ、ホント」
「大げさなんかじゃないさ、本当に、天国にいるみたいだ」
喋るのも気だるいみたいな話し方が、まるごとリラックスしているのが伝わってきて、こっちまで落ち着いてくる。夕方なのに暖かい風がふわふわと前髪を揺らして、俺たちを包むようにしながら背後に通り抜けていく。それだけでも随分心地いい。
よほど心地よかったのか、目を閉じた彼は、そのまま寝息を立て始めてしまった。
「おい、起きろ、夕方に昼寝すんな」
ちょっと笑いながら日本語で呟いた。どんだけ気抜いてんだよ。仕方ない、少しの間、膝を貸してやるか。
眠る彼の顔を見ているだけなのに、俺はなんだか、やたら幸せな気持ちになっていた。
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