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第41話

彼が目を覚ました頃にはもうあたりは真っ暗で、流石に風も冷たくなっていた。 「すまない、寝てしまった」 本当に眠そうに謝ってくるのが、冬眠明けのクマみたいだった。 「なんで謝んの、せっかくの旅行なんだから、いいんだよリラックスして」 「だが、お前を1人にさせてしまっただろ」 「別に1人じゃねぇじゃん、お前いるし」 「俺が寝ている間、暇をさせてしまったから」 「そんなことねぇって」 寂しい思いをさせたくないんだってさ。全然寂しくなかったのに。だったら今朝早起きしてほしかったよ。 「そんなことよりさ、そろそろ飯じゃねぇか?」 時計もないからわからないけど、暗くなってきたから適当に言ってみただけ。 「ああ、食事か。レストランに行かなくてはな」 「レストラン? 部屋食だから部屋に運んできてくれるって言ってたぜ。7時だったかな」 「ヘヤショク? この部屋で食べるってことか?」 「うん、旅館ってそういうサービスがあるんだよ」 「なるほど、ルームサービスか」 「ルームサービス……に、なるのかなぁ?」 一般的なホテルのルームサービスとは違う気がするけど、他に納得してもらえそうな言葉は俺の辞書にない。 「まぁとりあえず、時間になれば飯が勝手に来るってこと」 適当に結論づけて、部屋の中に入るように促す。その時見た彼の腕時計は、6時半過ぎをさしていた。ちょうどいい。

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