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第43話
「え? 目の前でなんか作ってもらえる感じですか?」
ギョッとして女将に尋ねると、柔和に微笑んでいる。
「左様でございます。焼きたて、揚げたてをお召し上がりいただきます」
「うわぁ」
向かい合って作られた席はテーブル席で、藤の蔓を編んだような大正レトロな椅子が用意されている。
おかけくださいと促され、彼とともに席に着いた。
「素晴らしい、日本食の旨さには本当に頭が下がるんだ。こんな形で食べられるなんて」
ハンバーガーや分厚い肉など、絵に描いたような外国の食事を好んでいた彼だが、日本に住み始めて日本食も食べるようになった。味や食感が全然違うといって、何か食べるたびに感激している。
とはいえ箸使いはまだまだ下手で、子供が使う箸の矯正キットを使用して食事していた。
「これがないとな」
もちろん今日も持参していた。テーブルに置かれた白木の箸の頭の方に矯正キットをつけると、満足そうに頷く。早くキットを卒業したいと言っていたけど、なんか可愛いから、ずっとそのままでもいいような気もする。
「お酒がお好みとのことでしたので、会席料理をご用意いたしました」
と、言われたものの、その辺の教養がないのでどんな料理が出るのかわからない。すごい料理だろうという漠然とした想像しかできない。
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