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第45話

フグと菊の酢の物、ブランド牛の牛鍋、目の前でさばく伊勢海老と本マグロの希少部位の刺身、あんまり聞きなれないけどなんだかすごいレアらしい野菜の漬物など、日本らしくて繊細で豪華な料理が続く。 焼き物なんかは目の前で調理されたものがそのまま提供されて、一口食べるたびに彼と揃って悶絶した。 「はー、ヤベェ。マジうめぇし」 「フランス料理のフルコースはもう食べ飽きるくらい食べたものだが、日本のフルコースも同じくらいうまいくて箸が進んでしまうな」 雑な俺なんかと違って、まるで食レポみたいな感想を言う。手元の酒も銚子2本目に突入していた。 「ほい、酒」 手酌しそうになっていたから、彼のお猪口に酒を注ぐ。 「料理も最高だし、お前に入れてもらった酒はうまいし、本当に満足だな」 「酒はうまいしだけでいいだろ、いちいち言わなくたって」 とか言いながら、酔ってきてるせいだか、惚気られるのもそれほど嫌じゃない。 「お前は、酒は?」 銚子ごと手を伸ばして来たので、遠慮なく頂く。 そんなときにふと思い出したのは、旅館といえばのアイテムのアレだった。 「あ、女将、すいません」 「はい、なんでございましょう」 「聞こうと思ってすっかり忘れてたんですけど、ここって浴衣ありますか?」 すると、女将が笑顔で頷く。

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