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第47話
そんなことを話しながら食事していたら、水菓子が出る頃には、すっかり満腹になっていた。
「腹がいっぱいだ」
さすがの彼も腹を撫でている。
「当館の食材は、全て提携している牧場、漁場、農家から調達しております。季節毎に審査を行なっておりまして、味はお墨付きです」
女将が言う通り本当にどれも上品で、彼の別荘で食べたシェフの料理にも負けないくらいうまい。
「事前にお嫌いな食材などは伺っておりませんが、何かございましたらお気軽にお知らせ下さいませ」
こんなところで好き嫌いなんか言ってたらバチがあたりそうだ。
「本当に素晴らしい料理をありがとう、明日からの食事も楽しみで仕方がない」
彼がまるで高級レストランのシェフを呼びつけたみたいなことを言うと、女将が殊更上品に微笑んだ。
食後の片付けもあれよあれよと言う間に終わり、あっという間に板前たちは退室してしまった。
「浴衣をお持ちいたしました、もしサイズが合わないようでしたらご連絡ください。館内は屋外も含めて、浴衣でお過ごしいただいて結構でございます」
片付けの合間に女将が浴衣を持ってきてくれていた。部屋は、あっという間に静まり返ってしまった。
「1週間あんな感じなのかな、すげーな」
食卓の後に設置された座卓で食休みする。爪楊枝が欲しいと思ったのはさておき。
「ハニー、浴衣を着よう」
抱きしめるみたいに浴衣を持った彼はテンションが高かった。
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