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第49話
「そのままだと風邪ひく」
浴衣を預かり、彼の手を取る。
「袖通して」
腕を袖に導いて、反対側の袖にも腕を通させる。丈を調整して、右前になるように衽を重ねた。足首が出るくらいの着丈で丁度いい。
少し背伸びして彼の襟を直してから、腰に帯紐を回した。
「腹きつくないか?」
結いながら尋ねる。されるがままの彼は少し緊張したような様子で、大丈夫だと言った。
「なんだかスカスカするな」
「浴衣なんてそんなもんだよ。落ち着かない?」
「あぁ、少しな。でもこれはこれで気持ちがいい気がする」
そのまま腕を伸ばしたり体をひねったりする。
「あんまり激しく動くと着乱れるからな。大人しくしてろよ」
「確かにヒモで結んでいるだけだからすぐに脱げそうだな」
とかなんとか言いながらすごく楽しそうにしている。どこまでなら着乱れないか確認するみたいに、体を動かしている。その仕草がなんだか面白いし可愛い。
「さ、俺も着替えるかなー」
言いながら服を脱ぐ。浴衣なんてホント何年振りだろう。最後に温泉行ったのが刺青入れる前だから、もう10年以上前のことになる。着物も着ることがないし、そう考えると日本の伝統的な服って本当に着ることがない。値段も高いし手入れも大変だし、オイソレと着られる手頃なものではないよなぁ。
なんていろいろ考えながらパンツ一丁になると、その様子を彼がじっと眺めていた。
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