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第50話

「なんだよ」 あんまりじろじろ見られるから変な感じ。素っ裸なんか見慣れてるはずなのに。 「なんだかあまりにもスカスカしているし脱げそうだから、ハニーも随分セクシーなんじゃないかと思ってな」 浴衣に袖を通した時にそんなこと言うもんだから、手が止まった。 「あのなぁ、ムラムラすんの禁止。浴衣着たくらいでムラムラされてたら身がもたねぇよ」 先を見越してあらかじめ言っておく。けど、彼の鼻の下の伸び具合は止まらない。 「日本人のハニーが日本の伝統的な服を着ているんだぞ、興奮しないワケがないだろ。しかも脱げやすいのに」 「脱げやすいもんじゃねぇんだって、脱げないように慎ましやかに過ごせってんだよ」 「俺は日本人じゃないからそういうのはよくわからない」 「そういう時だけ外人丸出しにすんな」 俺が浴衣を着終えると、彼は色欲丸出しというよりは、感激したようなキラキラとした笑顔になっていた。 「やはりハニーは似合うなぁ、すごく似合う。線が細いからだろうか、美しいよ」 「そりゃどうも。ありがとよ」 あー、浴衣の着心地ってこんな感じだったなぁ。着た感じとか帯紐の圧迫感とか、もう何年と感じたことのない感覚で本当に懐かしさを覚える。俺日本人なんだなぁって、変な感慨深さあった。

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