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第51話
「ハニー、抱きしめるのはダメか?」
ムラムラするのは我慢するから、と言いながら抱き寄せられる。
素っ裸で抱き合うのにも慣れてるけど、浴衣の生地越しに伝わる温もりも、なんだか優しくてホッとする。
「……じゃあ、風呂入ったらしようか?」
彼の温もりを感じたら、戒めた俺の方がちょっとムラムラしてきた。
彼が一層強く俺を抱きしめる。
「本当か? それならすぐに風呂に入ろう」
「えー、マジかよ、せっかちだな」
ちょっと焦らしてみるけど、俺だってそれほど気の長い方じゃない。軽く重ねるだけのキスを交わすと、お姫様抱っこで風呂に連れていかれる。
十畳ほどの広さの脱衣場には、広い洗面台とトイレも備え付けられていた。
「すげーな、ここだけはちゃんと現代のもの使ってるわ」
そりゃあそうか。遊郭当時のトイレとか洗面台とか、そもそもそういう設備があったのかどうかも知らないけど、そのまま使っていたとしたら旅館ではなくて博物館扱いになっていただろう。
「ハニー、それより脱いでくれ」
すっかりテンションが上がった彼は、すでに結ってやったばかりの紐を解いている。
「ったく、お前ってほんっとせっかちな」
「せっかちじゃないと経営者なんてやってられないさ」
それらしいことを言うし。
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