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第52話
浴場はオール露天だったので寒いかなと思ったけど、案外素っ裸でもそれほどの寒さは感じず、こんなところでも初夏の訪れを感じられた。
間接照明が程よく浴場全体を照らしてくれて、雰囲気もとてもいい。
「全身に風を浴びるのは気持ちがいいな。ヌーディストビーチに行ったのを思い出す」
脱衣場から浴場に出た彼は、軽く目を閉じた。
「お前ヌーディストビーチ行ったことあるんだ?」
洗い場に誘導しながら尋ねてみた。
「あぁ、友人に誘われて一度だけな。女性の体はあまり見たくなかったが」
「そこは徹底してんだな」
「まぁ、俺がゲイだからということもあるが、なんとなく見てはいけないもののような気がする」
「ふぅん、そんなもんかね」
「そんなもんさ。日本はそういう場所はないな」
「昔から普通に風呂に素っ裸で入る文化だから、そんなの必要なかったんだと思うぜ」
風呂用の椅子に腰掛ける。洗い場は2つあったから並んで座った。
「入るマナーは銭湯と一緒だから。先に体を洗う」
奴に逐一日本のマナーを教えるのも、すっかり慣れたもんだった。
「もちろんさ、覚えたぜ!」
少しずつレベルアップしてるからな、なんて目を輝かせている。とはいえあんまり日本に馴染みすぎても彼らしくなくなってしまうのでは、なんてちょっと危惧するところもあったりして。
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