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第62話

風呂から上がった俺たちは、慣れない疲れのせいか、そのままベッドに入り気を失うように眠ってしまった。 せっかく2つあったベッドなのに、結局いつものように2人で1つのベッドに入って眠っていた。多分、滞在中はもう片方のベッドは使わずに過ごすだろう。 不思議なもんで目が覚める時間もいつもと変わりなくて、大口開けて寝ている彼を見て呑気だなぁと思うほどだった。 そんな彼も不思議なもんで、朝飯の支度が出来たと声をかけられた頃には目を覚まして、相変わらずクマみたいな図体で子供みたいに伸びをしているのだった。 朝食は一階の大広間に支度されているという。浴衣を着直して大広間に向かうと、ど真ん中にレッドカーペットが敷かれていた。その上に2つ並べられた、和テイストで重厚な感じの黒塗りのテーブルと椅子。開け放たれた向こう側には、昨日彼が感激していた大きな中庭が見える。 緑が青々と生い茂って、畳の上に反射して碧い影を作り出している様は、目が覚めるような美しさだった。 「これは何の料理だ?」 席に着いた彼が、まだ眠たそうに、朝食の鯛茶漬けを指差して首を傾げる。 「お茶漬け」 「オチャズケ?」 「食べたことないもんな。日本のシリアルみたいな感じ」 言ってからシリアルではねぇかと思ったけど、まぁいいや。主食に何かかけるんだからシリアルってことでいいことにする。 一口食べた彼は目を輝かせた。 「美味いなぁ!シリアルというから想像していた味とは違ったが、シリアルより美味い!」 付け合わせの漬物もモリモリ食べてる。 「ハニー、これは?これは作れるか?」 よほど気に入ったのか、家庭内シェフの俺に聞いてくる。 「これなら昨日の白和えより楽だから、作れると思うよ」 味はわからないけど、と言うと 「ハニーの料理なら大丈夫さ!」 なんて笑ってる。穏やかな1日が始まりそうだ。

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