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第64話

庭は大きな池を中心とした苔庭で、飛石を配して一周できるようになっていた。 「おおっ、素晴らしい、鯉がたくさんいるぞ!」 動物好きが疼くのか、彼はいい笑顔で鯉を眺めている。5、6匹、美しい赤と白の模様を纏った錦鯉が優雅に池を泳いでいる。泳ぐ宝石とかいう異名だっただろうか、たぶんこの鯉も1匹だけでもバカ高いんだと思う。 「ハニー、あの」 目をキラキラさせたままこっちを向いたから、先回りする。 「鯉は飼わねぇぞ」 「oh! ハニーはエスパーなのか? どうして俺が言いたいことがわかった?」 「あたりめぇだろ、お見通しだ」 そのまま流して飛石を踏む頃には、足も慣れて落ち着いてきた。彼の腕を離れ、数歩先を歩く。 「すげぇ。なんか気持ちいい」 見上げると青空、周りは苔、そして少し背の高い青々とした楓の木、サワサワと風で揺れる音が髪も通り抜けていって心地いい。 そのまま目を閉じると、光の差し込む感じも伝わってくる。 「ハニー、お前は本当に美しい。天使のようだ」 追いついた彼が、俺の肩に手を置く。振り返ると、とんでもなく優しい微笑みを向けて来た。 「……お前も、カッコいい」 思ったままを口にすると、額に軽くキスを落とされる。

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