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第66話

「石?」 俺の違和感を彼はまったく感じていないらしい。俺が見ていた石にズンズン突き進んでいく。その道のりに飛石はない。 「いいって行かなくて! そっちに道ねぇから!」 慌てて浴衣の裾を掴んで止める。彼はもろともしない。 「随分古い石だな、苔が生えている」 そう。苔も生えまくってて、年季の入ってる石。その周辺だけ、なんだかやたら湿っぽい雰囲気が漂っている。それが余計に気味が悪い。 「だからやめろって」 ちょっと声を潜めた。彼の背中に隠れるようにしながら石を見る。 「これはなんだ? こういうオブジェか?」 石の気味悪さと彼の知的好奇心が真正面からぶつかる。 「いや、オブジェじゃない、と思うけど」 こんなところにあるとは思わないけど。間違いだとは思うけど。石のうちの1つは、なんとなくお地蔵さんに見えた。 「不思議なオブジェだな」 流石の彼も思ったらしい。古ぼけて、ハタキで叩いたら埃が出そうな風体をしている。 「なぁ、もう部屋戻ろう」 怖い話とかそういうのが苦手というわけではない。と思っているけれど、わざわざ自ら怪しいものに手を出す必要もない。

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